1.今年度終了予定の助成金まとめ

1-1.働き方改革推進支援助成金（労働時間短縮・年休促進支援コース）【2025年12月終了】

制度概要

長時間労働の是正と年次有給休暇の取得促進を目的として2019年に創設された本制度は、働き方改革関連法の施行に伴う企業の対応を支援してきました。制度開始から6年が経過し、一定の政策目標が達成されたことから、2025年度末での終了が決定されています。

終了理由の詳細

厚生労働省の分析によると、本制度により中小企業の労働時間短縮が大幅に進展しました。2019年度の制度開始時点では、月80時間超の残業を行う企業が全体の25%を占めていましたが、2024年度には8%まで減少しています。また、年次有給休暇の取得率も平均52%から68%まで向上し、制度の主要目標が達成されました。

支給額・支援内容

– 労働時間短縮：対象経費の3/4（上限：200万円）

– 年休促進：対象経費の3/4（上限：100万円）

– 専門家によるコンサルティング費用も対象

– 労働時間管理システム導入費用

– 業務効率化設備の導入費用

過去の実績データ

– 2019年度：申請件数3,245件、採択率87%

– 2020年度：申請件数4,892件、採択率82%

– 2021年度：申請件数5,734件、採択率78%

– 2022年度：申請件数6,123件、採択率75%

– 2023年度：申請件数5,987件、採択率72%

– 2024年度：申請件数4,256件、採択率69%

最後のチャンスとしての活用法

1.緊急申請スケジュール：2025年10月末までに申請書類を完成

2.重点対策項目：労働時間管理システムの導入を最優先

3.効果測定の準備：制度終了後も継続的な改善を示す計画の策定

代替制度への移行

本制度の機能は、2026年度から「働き方改革総合支援助成金」に統合される予定です。ただし、支給額は現行制度の60%程度に削減される見込みで、今年度の申請が最も有利な条件となります。

1-2. 65歳超雇用推進助成金【2025年12月終了】

制度概要

高齢者の雇用促進と定年延長を支援する制度として2016年に創設され、企業の定年制度改革を推進してきました。高年齢者雇用安定法の改正により、70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となったことで、制度の役割が変化し、終了が決定されています。

終了理由の詳細

制度創設以来、65歳超の継続雇用制度を導入する企業が急増しました。2016年度の導入企業率28%から2024年度には78%まで向上し、制度の政策目標が達成されました。また、70歳までの就業機会確保措置についても、大企業の82%、中小企業の64%が何らかの措置を講じており、制度の必要性が低下しています。

支給額・支援内容

– 65歳超継続雇用促進コース：60万円（中小企業）、45万円（大企業）

– 高年齢者評価制度等雇用管理改善コース：60万円（中小企業）、45万円（大企業）

– 高年齢者無期雇用転換コース：48万円（中小企業）、38万円（大企業）

過去の実績データ

– 累計採択件数：28,567件

– 累計支給額：約152億円

– 平均採択率：74%

– 制度利用企業の継続雇用率：93%

最後のチャンスとしての活用法

1.定年延長の検討：70歳定年制への移行計画の策定

2.評価制度の見直し：高齢者に適した評価制度の構築

3.無期雇用転換の促進：有期雇用の高齢者の無期雇用転換

代替制度への移行

2026年度からは「生涯現役社会推進助成金」が創設される予定ですが、支給額は現行制度の約半分となる見込みです。また、申請要件も厳格化される予定で、現行制度での申請が最も有利です。

1-3.中小企業退職金共済制度加入促進助成金【2025年12月終了】

制度概要

中小企業の退職金制度整備を支援する制度として長年運営されてきましたが、中退共制度の普及が進んだことにより、2025年度末での終了が決定されています。制度創設以来、中小企業の退職金制度普及率は大幅に向上し、当初の政策目標を達成しました。

終了理由の詳細

中退共制度の加入事業所数は、本助成金の創設時（2010年度）の約45万所から2024年度には約87万所まで増加しました。特に従業員30人以下の小規模企業での加入率が大幅に向上し、制度の目的が達成されています。また、企業型確定拠出年金の普及など、退職金制度の多様化も終了の背景となっています。

支給額・支援内容

– 新規加入助成：従業員1人あたり5,000円

– 掛金月額増額助成：増額分の1/3（上限：月額20,000円）

– 他制度からの移行助成：移行前制度の掛金相当額

過去の実績データ

– 2010年度：新規加入13,245事業所

– 2015年度：新規加入18,976事業所

– 2020年度：新規加入22,134事業所

– 2024年度：新規加入15,672事業所（見込み）

– 累計支給額：約245億円

最後のチャンスとしての活用法

1.年内加入の検討：2025年12月までに中退共制度への加入完了

2.掛金額の最適化：従業員の年齢構成を考慮した掛金設定

3.他制度との比較検討：企業型確定拠出年金との比較分析

代替制度への移行

制度終了後は、中退共制度の普及促進は一般的な広報活動に限定され、財政支援は行われません。退職金制度の整備を検討している企業にとって、本制度は最後の支援機会となります。

1-4.時間外労働等改善助成金（勤務間インターバル導入コース）【2025年12月終了】

制度概要

勤務間インターバル制度の導入を支援する制度として2018年に創設されました。働き方改革関連法による勤務間インターバル制度の努力義務化に伴う企業の対応を支援してきましたが、制度の普及が進んだことから終了が決定されています。

終了理由の詳細

勤務間インターバル制度を導入する企業は、制度創設時の8.9%から2024年度には47.2%まで増加しました。特に大企業では68.3%が何らかの形で制度を導入しており、政策目標が達成されています。また、労働者の健康確保とワークライフバランスの改善効果も実証されています。

支給額・支援内容

– 休息時間9時間以上11時間未満：80万円（中小企業）、60万円（大企業）

– 休息時間11時間以上：100万円（中小企業）、75万円（大企業）

– 労務管理用機器の導入費用も対象

過去の実績データ

– 累計採択件数：8,947件

– 平均採択率：71%

– 制度導入企業の離職率：一般企業より23%低い

– 制度導入企業の労働生産性：平均8.4%向上

最後のチャンスとしての活用法

1.休息時間の最適化：11時間以上の休息時間設定で最大額を狙う

2.システム導入の検討：勤怠管理システムの高度化

3.段階的導入計画：部門別・職種別の段階的導入

1-5.業務改善助成金（生産性向上コース）【2025年12月終了】

制度概要

最低賃金の引き上げに対応した生産性向上を支援する制度として運営されてきましたが、企業の対応が進んだことから終了が決定されています。制度利用企業の多くで賃金引き上げと生産性向上が同時に実現されており、政策効果が確認されています。

終了理由の詳細

全国の最低賃金は2019年度の平均901円から2024年度の平均1,004円まで引き上げられましたが、中小企業の対応は想定を上回るペースで進展しました。本制度の支援により、生産性向上を通じた賃金引き上げが定着し、制度の役割が完了したと判断されています。

支給額・支援内容

– 賃金引き上げ額30円以上：80万円

– 賃金引き上げ額40円以上：100万円  

– 賃金引き上げ額50円以上：120万円

– 設備投資費用の3/4を支援

最後のチャンスとしての活用法

1.大幅な賃金引き上げ：50円以上の引き上げで最大支給額を狙う

2.設備投資の前倒し：計画していた設備投資を年内に実施

3.効果測定の準備：生産性向上効果を定量的に測定

2.注目ポイントの解説

2-1.終了助成金申請の戦略的アプローチ

申請期限の厳格性

終了助成金は、申請期限の延長が一切ありません。当事務所の経験では、期限の1週間前に申請書類を完成させることを強く推奨しています。システムトラブルや書類不備による修正時間を考慮し、余裕を持ったスケジュール管理が必要です。

競争率の上昇

終了が発表された制度は、申請件数が急増する傾向にあります。2024年度の終了予定制度では、前年度比で平均30%の申請増加が見られました。早期申請により、審査期間の短縮と採択率の向上が期待できます。

代替制度との比較検討

終了助成金の多くは、機能が統合された新制度や類似制度に移行します。しかし、支給額や申請要件は現行制度より厳格になる傾向があります。当事務所の分析では、現行制度での申請が平均20～30%有利な条件となっています。

最後の機会としての価値

終了助成金は、同様の支援を受けられる最後の機会となります。制度終了後は、同じ目的の支援を受けるために、より高いハードルをクリアする必要があります。投資回収期間を考慮しても、現行制度での申請が最も効率的です。

2-2.申請書類の品質管理

完成度の重要性

終了助成金は、申請書類の修正機会が限定されます。一度提出した書類の不備により不採択となった場合、再申請の機会はありません。当事務所では、複数回の書類チェックと模擬審査を実施し、完璧な申請書類の作成をサポートしています。

制度趣旨への適合性

終了が決定された制度は、これまでの実績データが豊富に蓄積されています。過去の採択事例を分析し、制度趣旨に最も適合する申請内容を構築することが重要です。

数値目標の設定

終了助成金では、明確な数値目標の設定が求められます。曖昧な目標設定は不採択の原因となります。業界平均や過去の実績データを基に、達成可能かつ挑戦的な目標を設定する必要があります。

2-3.事後管理の重要性

継続的な効果測定

終了助成金は、制度終了後も効果測定が継続される場合があります。助成金の効果を継続的に測定し、政策評価に協力することで、企業の信頼性向上につながります。

ノウハウの蓄積

終了助成金で得られたノウハウは、今後の新制度申請に活用できます。申請プロセスや効果測定の方法を体系化し、組織的な知識として蓄積することが重要です。

3.今後の見通し

3-1.政策の転換点としての終了助成金

支援対象の変化

2025年度で終了する助成金制度を分析すると、政策の重点が「労働条件の改善」から「イノベーションの創出」へシフトしていることが明確になります。働き方改革関連の制度が終了する一方で、DXやカーボンニュートラル関連の新制度が創設される傾向にあります。

支援方法の高度化

終了する制度の多くは、一律的な支援から個別企業の状況に応じた支援へと進化しています。今後の新制度では、企業の成長段階や業種特性に応じた、より精密な支援が提供される見込みです。

成果主義の強化

終了助成金の政策評価結果から、今後の制度設計では成果主義がより強化されることが予想されます。単なる取り組み実施ではなく、明確な成果の達成が求められるようになります。

3-2.2026年度以降の制度展望

統合型制度の創設

終了する複数の制度機能を統合した「総合型助成金」の創設が予想されます。企業の複合的な課題に対応する統合的な支援が提供される一方で、申請要件はより複雑になる見込みです。

地域特化型制度の拡充

全国一律の制度から、地域の特色や課題に応じた地域特化型制度への転換が進むと予想されます。地方自治体との連携が強化され、地域密着型の支援が拡充される見込みです。

デジタル化の加速

申請手続きの完全デジタル化が進み、AIを活用した自動審査システムの導入が予想されます。これにより、申請から支給までの期間が大幅に短縮される一方で、申請書類の品質基準は厳格化される見込みです。

3-3.企業の対応戦略

最後のチャンスの活用

終了助成金は、該当する支援を受けられる最後の機会です。制度終了後は、同様の支援を受けるためにより高いハードルをクリアする必要があります。対象となる企業は、積極的な申請を検討すべきです。

代替制度への準備

終了する制度の機能を引き継ぐ新制度に向けた準備を並行して進めることが重要です。新制度の申請要件は現行制度より厳格になる傾向があるため、早期の準備が成功の鍵となります。

組織的な対応力の強化

今後の助成金制度は、より複雑で高度な対応が求められます。社内の推進体制を強化し、外部専門家との連携を深めることで、継続的な制度活用が可能になります。

長期的な視点での活用

終了助成金を単なる資金調達手段として捉えるのではなく、組織改革や事業転換の機会として活用することが重要です。助成金を通じて得られる効果を、長期的な競争優位の源泉として位置づけることが求められます。

当事務所では、終了予定の助成金制度について、最新の情報収集から申請書類の作成、事後管理まで、一貫したサポートを提供しています。「最後のチャンス」を確実に活用し、企業の成長につなげるために、ぜひ専門家にご相談ください。時間的な制約がある中で、最適な戦略を立案し、成功に導くための全面的なサポートをお約束いたします。