複数の助成金を同時に使っても大丈夫?|併給調整と戦略的活用法を徹底解説 - 全国助成金・補助金サポートセンター

複数の助成金を同時に使っても大丈夫?|併給調整と戦略的活用法を徹底解説

「キャリアアップ助成金をもらっているけど、人材開発支援助成金も申請できる?」 「複数申請したら不正になるのでは?」 「同じ従業員に2つの助成金を使うのは問題?」

助成金の活用を進めている経営者の方から、このような質問をよくいただきます。せっかく使える助成金があるのに、「複数申請は禁止」と思い込んで機会を逃してしまうのは、とてももったいないことです。

結論から申し上げると、多くの場合、複数の助成金を同時に活用することは可能です。ただし、一定のルールがあり、正しく理解して申請する必要があります。

この記事では、社会保険労務士事務所として数多くの複数申請をサポートしてきた経験をもとに、併給調整のルールから戦略的な組み合わせ方法まで、詳しく解説します。助成金を最大限活用したい方は、ぜひ最後までお読みください。

【目次】

  1. 複数の助成金を同時に使っても大丈夫?
  2. よくある誤解の背景
  3. 専門的な視点から見た複数申請の戦略
  4. 実践的な組み合わせ例
  5. 申請時の注意点
  6. 成功事例
  7. まとめ

1.複数の助成金を同時に使っても大丈夫?

基本的な考え方

複数の助成金活用についての基本原則を理解しましょう:

【原則】異なる目的の助成金は併給可能 助成金はそれぞれ異なる政策目的を持っています。例えば:

  • キャリアアップ助成金:非正規雇用の正規化
  • 人材開発支援助成金:能力開発の促進
  • 両立支援助成金:仕事と家庭の両立

これらは目的が異なるため、基本的に併給可能です。

【例外】同一の経費に対する二重取りは不可 同じ経費(賃金、設備投資等)に対して、複数の助成金から支給を受けることはできません。これが「併給調整」と呼ばれるルールです。

【重要】事前確認が必須 助成金ごとに併給に関する規定があるため、申請前に必ず確認が必要です。

併給調整のルール

併給調整には明確なルールがあります:

  1. 同一の賃金に対する調整

例:同じ期間の賃金に対して

× キャリアアップ助成金の賃金助成

× 特定求職者雇用開発助成金

→ どちらか一方のみ受給可能

 

  1. 同一の経費に対する調整

例:同じ研修費用に対して

× 人材開発支援助成金

× 他の研修費補助

→ 重複部分は調整が必要

 

  1. 時期をずらせば可能

例:異なる期間であれば

○ 4〜9月:トライアル雇用助成金

○ 10月〜:キャリアアップ助成金

→ 期間が重複しなければOK

 

  1. 対象者を分ければ可能

例:異なる従業員であれば

○ Aさん:キャリアアップ助成金

○ Bさん:特定求職者雇用開発助成金

→ 対象者が異なればOK

 

組み合わせ可能なパターン

実際に組み合わせ可能な代表的パターンをご紹介:

パターン1:段階的活用型

採用時:トライアル雇用助成金

 ↓(3ヶ月後)

正社員化:キャリアアップ助成金

 ↓(その後)

能力開発:人材開発支援助成金

 

パターン2:並行活用型

同時期に異なる従業員で

・新卒採用:人材開発支援助成金

・中途採用:中途採用等支援助成金

・パート正社員化:キャリアアップ助成金

 

パターン3:目的別活用型

同一企業が異なる目的で

・雇用関係:キャリアアップ助成金

・設備投資:業務改善助成金

・教育訓練:人材開発支援助成金

 

パターン4:部門別活用型

事業所・部門ごとに

・本社:働き方改革推進支援助成金

・工場:業務改善助成金

・店舗:キャリアアップ助成金

 

2.よくある誤解の背景

誤解1:複数申請は不正行為

誤解の内容 「複数の助成金を申請すること自体が不正行為になる」と思い込んでいる方がいます。

真実 正当な複数申請は全く問題ありません:

  1. 国も推奨している 
    • 総合的な支援を意図
    • パッケージでの活用例を紹介
    • 相乗効果を期待
  2. 多くの企業が実践 
    • 大企業も中小企業も活用
    • 成功事例が多数
    • 適正な運用が前提
  3. ルールを守れば正当 
    • 併給調整ルールの遵守
    • 適正な申請手続き
    • 虚偽申請でなければOK

誤解2:同一従業員は1つだけ

誤解の内容 「1人の従業員には1つの助成金しか使えない」という誤解があります。

真実 時期や目的が異なれば複数活用可能:

時系列での活用

入社時:トライアル雇用助成金

6ヶ月後:キャリアアップ助成金

1年後:人材開発支援助成金

  1. 異なる支援内容 
    • 雇用関係の助成金
    • +教育訓練の助成金
    • +両立支援の助成金
    • 目的が異なれば併用可
  2. ライフステージに応じて 
    • 若年期:若年者雇用促進
    • 子育て期:両立支援
    • 高齢期:高齢者雇用
    • 長期的な活用が可能

誤解3:同時申請は不可

誤解の内容 「申請は1つずつ順番に行わなければならない」と考える方がいます。

真実 多くの場合、同時申請が可能:

  1. 異なる助成金なら同時申請OK 
    • 申請窓口が同じでも可
    • それぞれの要件を満たせば
    • 事務効率も向上
  2. 計画的な申請が重要 
    • 年間スケジュール作成
    • 申請時期の最適化
    • 書類の共通化
  3. 窓口での一括相談も可能 
    • 労働局でまとめて相談
    • 効率的な手続き
    • 総合的なアドバイス

誤解4:管理が複雑すぎる

誤解の内容 「複数の助成金を管理するのは中小企業には無理」という諦めがあります。

真実 適切な方法で十分管理可能:

  1. 共通書類の活用 
    • 賃金台帳は共通
    • 就業規則も共通
    • 基本書類の使い回し
  2. 管理ツールの活用 
    • エクセルで十分
    • 申請スケジュール表
    • チェックリスト
  3. 専門家のサポート 
    • 社労士による一括管理
    • 効率的な申請
    • ミスの防止

3.専門的な視点から見た複数申請の戦略

社会保険労務士としての見解

当事務所では、多くの企業様の複数助成金活用をサポートしてきました。その経験から、複数の助成金を戦略的に組み合わせることで、単独申請の何倍もの効果を生み出せることを実感しています。

複数申請を成功させるポイント:

  1. 全体設計の重要性 助成金は単発で考えるのではなく、3〜5年の中期計画で設計することが重要です。例えば、創業期は雇用系助成金、成長期は人材育成系、安定期は働き方改革系というように、企業のステージに応じた活用計画を立てます。
  2. 相乗効果を狙う キャリアアップ助成金で正社員化した従業員に、人材開発支援助成金で高度な研修を受けさせる。このような組み合わせにより、従業員のモチベーションと能力の両方を高めることができます。
  3. リスク分散の効果 1つの助成金に依存すると、制度変更や不採択のリスクがあります。複数の助成金を組み合わせることで、安定的な支援を受けることができます。
  4. 管理の効率化 一見複雑に見える複数申請も、年間カレンダーを作成し、共通書類を整備することで、効率的に管理できます。当事務所では、クライアント企業ごとにカスタマイズした管理表を提供しています。

効果的な組み合わせ方

業種・規模別のおすすめ組み合わせ:

製造業(中小企業)

基本パッケージ:

・業務改善助成金(設備投資)

・キャリアアップ助成金(人材確保)

・人材開発支援助成金(技能向上)

 

期待効果:

・生産性30%向上

・離職率50%削減

・技能承継の実現

 

サービス業(小規模)

基本パッケージ:

・トライアル雇用助成金(採用)

・キャリアアップ助成金(定着)

・両立支援助成金(働きやすさ)

 

期待効果:

・採用成功率向上

・定着率80%以上

・女性活躍推進

 

IT企業(スタートアップ)

基本パッケージ:

・中途採用等支援助成金(即戦力)

・人材開発支援助成金(DX人材)

・働き方改革推進支援助成金

 

期待効果:

・優秀人材の確保

・最新技術の習得

・柔軟な働き方実現

 

小売業(多店舗)

基本パッケージ:

・キャリアアップ助成金(各店舗)

・業務改善助成金(省力化)

・特定求職者雇用開発助成金

 

期待効果:

・人材の質向上

・業務効率化

・多様な人材活用

 

リスク管理の方法

複数申請のリスクを最小化する方法:

  1. 併給調整の事前確認
  • 申請前に必ず確認
  • 不明な点は労働局に照会
  • 専門家の意見も参考に
  1. 書類管理の徹底
  • 助成金ごとにファイリング
  • 共通書類は複製を保管
  • デジタル化で検索性向上
  1. スケジュール管理
  • 申請期限の一覧化
  • リマインダー設定
  • 余裕を持った準備
  1. コンプライアンス重視
  • 正確な記録
  • 適正な労務管理
  • 定期的な自己点検

4.実践的な組み合わせ例

組み合わせ例1:新規採用パッケージ

状況:未経験者を採用して育成したい

【活用する助成金】

  1. トライアル雇用助成金

   – 期間:入社〜3ヶ月

   – 金額:月4万円×3ヶ月=12万円

 

  1. キャリアアップ助成金(正社員化)

   – 時期:入社6ヶ月後

   – 金額:57万円

 

  1. 人材開発支援助成金

   – 時期:正社員化後

   – 金額:研修費用の45%+賃金助成

 

【トータル効果】

– 助成金額:100万円以上

– 採用リスクの軽減

– 計画的な人材育成

 

組み合わせ例2:働き方改革パッケージ

状況:生産性向上と労働環境改善を両立

【活用する助成金】

  1. 業務改善助成金

   – 内容:設備投資+賃金引上げ

   – 金額:最大600万円

 

  1. 働き方改革推進支援助成金

   – 内容:労働時間短縮

   – 金額:最大490万円

 

  1. 両立支援助成金

   – 内容:育児・介護支援

   – 金額:各種コースで30〜60万円

 

【トータル効果】

– 助成金額:1,000万円以上可能

– 生産性と満足度の両立

– 企業イメージ向上

 

組み合わせ例3:人材育成集中パッケージ

状況:既存社員のスキルアップを図りたい

【活用する助成金】

  1. 人材開発支援助成金(人材育成支援)

   – 内容:一般的な研修

   – 金額:経費の45%+賃金助成

 

  1. 人材開発支援助成金(人への投資促進)

   – 内容:DX研修

   – 金額:経費の75%+賃金助成

 

  1. キャリアアップ助成金(賃金規定等改定)

   – 内容:スキルアップ後の処遇改善

   – 金額:1人3.2万円〜

 

【トータル効果】

– 体系的な人材育成

– モチベーション向上

– 組織力の強化

 

組み合わせ例4:ダイバーシティ推進パッケージ

状況:多様な人材を活用したい

【活用する助成金】

  1. 特定求職者雇用開発助成金

   – 対象:高齢者、障害者等

   – 金額:30〜240万円

 

  1. トライアル雇用助成金

   – 対象:就職困難者

   – 金額:月4万円

 

  1. 両立支援助成金

   – 内容:柔軟な働き方

   – 金額:各種支援

 

【トータル効果】

– 人材確保の幅が拡大

– 企業の社会的責任

– 多様性による革新

 

5.申請時の注意点

1. 事前準備のポイント

必須の確認事項:

  • ✅ 各助成金の併給調整規定
  • ✅ 申請時期の重複確認
  • ✅ 必要書類の共通部分
  • ✅ 労務管理体制の整備

準備すべき書類:

  • 就業規則(最新版)
  • 賃金台帳(直近1年分)
  • 出勤簿・タイムカード
  • 雇用契約書のひな形
  • 組織図・従業員名簿

2. 申請の順序とタイミング

効率的な申請順序:

  1. 要件の厳しいものから
  2. 金額の大きいものから
  3. 期限の近いものから
  4. 準備の整ったものから

避けるべきタイミング:

  • 年度末の駆け込み
  • 繁忙期での申請
  • 準備不足での見切り発車
  • 制度変更直後

3. 管理体制の構築

社内体制の整備:

  • 担当者の明確化
  • 情報共有の仕組み
  • 進捗管理表の作成
  • 定期的な確認会議

外部専門家の活用:

  • 社労士との顧問契約
  • 申請代行の依頼
  • 定期的な相談
  • セカンドオピニオン

4. コンプライアンスの徹底

絶対に避けるべきこと:

  • 虚偽の申請
  • 二重取りの試み
  • 書類の改ざん
  • 併給ルール違反

正しい姿勢:

  • 不明点は必ず確認
  • 正直な申告
  • 適正な記録保持
  • 継続的な改善

6.成功事例

事例1:建設業A社(従業員20名)

**課題:**人材不足と技能継承

活用した助成金:

  • トライアル雇用助成金:3名
  • キャリアアップ助成金:5名正社員化
  • 人材開発支援助成金:技能講習
  • 建設労働者確保育成助成金

結果:

  • 総額450万円の助成金受給
  • 若手人材5名の確保・定着
  • 技能継承の仕組み構築
  • 離職率が30%から5%に改善

事例2:介護事業B社(従業員50名)

**課題:**職員の定着と処遇改善

活用した助成金:

  • キャリアアップ助成金:15名
  • 両立支援助成金:育児・介護
  • 業務改善助成金:介護機器導入
  • 人材開発支援助成金:資格取得

結果:

  • 総額800万円の助成金受給
  • 平均賃金10%アップ
  • 離職率50%改善
  • 利用者満足度向上

事例3:IT企業C社(従業員10名)

**課題:**優秀な人材確保とスキルアップ

活用した助成金:

  • 中途採用等支援助成金:2名
  • 人材開発支援助成金:全社員
  • 働き方改革推進支援助成金
  • キャリアアップ助成金:3名

結果:

  • 総額350万円の助成金受給
  • エンジニア2名の採用成功
  • 最新技術の習得
  • 完全リモートワーク実現

事例4:小売業D社(従業員8名)

**課題:**パート社員の戦力化

活用した助成金:

  • キャリアアップ助成金:4名
  • 業務改善助成金:POS導入
  • 人材開発支援助成金:接客研修
  • 両立支援助成金:シフト改善

結果:

  • 総額280万円の助成金受給
  • パート4名を正社員化
  • 売上15%向上
  • 顧客満足度大幅改善

7.まとめ

**複数の助成金を戦略的に組み合わせることは、単独申請よりもはるかに大きな効果をもたらします。**正しいルールを理解し、計画的に活用すれば、企業の成長を加速させることができます。

成功のポイント:

  1. 併給調整ルールを正しく理解する
  2. 中長期的な活用計画を立てる
  3. 相乗効果を意識した組み合わせ
  4. 適切な管理体制の構築
  5. 専門家の活用も検討

複数申請は決して不正ではありません。むしろ、国も総合的な支援を想定して制度設計しています。この機会を最大限に活用しましょう。

当事務所では、企業様の状況に応じた最適な助成金の組み合わせをご提案しています。「どの助成金を組み合わせればいいか分からない」「併給調整が心配」という方も、お気軽にご相談ください。

複数の助成金を上手に活用して、人材育成、生産性向上、働き方改革を同時に実現し、持続的な成長への道を歩んでいきましょう。


※本記事の内容は2025年1月時点の情報に基づいています。併給調整のルールは助成金により異なりますので、申請時は必ず最新情報をご確認ください。