パートやアルバイトも対象になる?|非正規雇用者への助成金活用ガイド - 全国助成金・補助金サポートセンター

パートやアルバイトも対象になる?|非正規雇用者への助成金活用ガイド

「助成金は正社員だけが対象でしょ?」 「パートタイマーには使えないと思っていた…」 「アルバイトの教育に助成金なんて出ないよね?」

多くの経営者の方が、このような誤解をお持ちです。パートやアルバイトといった非正規雇用者は助成金の対象外だと思い込み、貴重な支援機会を逃してしまっているケースが非常に多いのです。

結論から申し上げると、パートやアルバイトも多くの助成金の対象になります。むしろ、非正規雇用者の処遇改善や能力開発は、国の重要政策の一つとして、手厚い支援が用意されています。

この記事では、社会保険労務士事務所として多くの企業の非正規雇用者への助成金活用をサポートしてきた経験をもとに、どのような助成金が使えるのか、申請時の注意点は何か、具体的な活用方法について詳しく解説します。パート・アルバイトを雇用している事業主の方は、ぜひ最後までお読みください。

【目次】

  1. パートやアルバイトも対象になる?
  2. よくある誤解の背景
  3. 専門的な視点から見た非正規雇用者への助成金活用
  4. パート・アルバイトが使える助成金詳細
  5. 申請時の注意点
  6. 成功事例
  7. まとめ

1.パートやアルバイトも対象になる?

非正規雇用者も対象になる理由

パート・アルバイトが助成金の対象になる背景には、明確な政策的理由があります。

  1. 同一労働同一賃金の推進 政府は正規雇用と非正規雇用の不合理な待遇差の解消を目指しています。EU諸国では既に実現されているこの原則を日本でも定着させるため、非正規雇用者の処遇改善を支援する助成金が充実しています。これは単なる理想論ではなく、労働力人口が減少する中で、すべての労働者の能力を最大限に活かすための現実的な政策なのです。
  2. 労働力不足への対応 現在、日本の全労働者の約4割が非正規雇用という状況です。もはやパート・アルバイトは補助的な労働力ではなく、企業運営に欠かせない重要な戦力として認識されています。この現実を踏まえ、非正規雇用者の能力開発や生産性向上を支援することが、日本経済全体の成長につながると考えられています。
  3. 雇用の安定化 不安定な非正規雇用から安定的な正規雇用への転換を促進することで、労働者の生活の安定と企業の人材確保の両立を図っています。キャリアアップ助成金が最も予算規模の大きい助成金の一つであることも、この政策の重要性を示しています。
  4. 多様な働き方の実現 育児や介護、健康上の理由など、様々な事情でフルタイム勤務が難しい人々も、その能力を発揮できる社会を目指しています。パート・アルバイトという働き方を選択した人々にも、スキルアップやキャリア形成の機会を提供することで、真の意味での全員参加型社会の実現を図っています。

対象となる主な助成金

パート・アルバイトが対象となる代表的な助成金:

  1. キャリアアップ助成金【最重要】

正社員化コース

– 対象:有期雇用のパート・アルバイト

– 内容:正社員への転換

– 金額:57万円/人(中小企業)

 

賃金規定等改定コース

– 対象:すべてのパート・アルバイト

– 内容:賃金の引上げ

– 金額:最大6.5万円/人

 

賞与・退職金制度導入コース

– 対象:すべてのパート・アルバイト

– 内容:賞与または退職金制度の新設

– 金額:38万円/事業所

 

  1. 人材開発支援助成金

人材育成支援コース

– 対象:雇用保険被保険者のパート

– 内容:職業訓練の実施

– 金額:経費の45%+賃金助成

 

人への投資促進コース

– 対象:デジタル分野の研修

– 内容:DXスキルの習得

– 金額:経費の最大75%

 

  1. トライアル雇用助成金

一般トライアルコース

– 対象:パート・アルバイトとして試用

– 内容:3ヶ月の試用期間

– 金額:月4万円×最大3ヶ月

 

  1. 業務改善助成金

対象:すべてのパート・アルバイト

内容:最低賃金引上げ+設備投資

金額:最大600万円(引上げ人数による)

 

雇用形態別の活用可能性

各雇用形態での助成金活用の可能性を詳しく見ていきましょう。

【パートタイマー】 週20時間以上勤務するパートタイマーは、ほぼすべての助成金の対象となります。雇用保険に加入することで、キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金、両立支援助成金など、主要な助成金を幅広く活用できます。週20時間未満の場合でも、労働時間延長コースなど一部の助成金は対象となりますし、段階的に労働時間を増やすことへの支援も受けられます。有期契約のパートタイマーは、キャリアアップ助成金の主要な対象者として、正社員化や処遇改善の支援を受けることができます。

【アルバイト】 学生アルバイトについては、昼間学生は原則として雇用保険の対象外となるため、一部制限があります。しかし、夜間部や通信制の学生、卒業見込みの学生は一般労働者と同じ扱いとなり、各種助成金の対象となります。フリーターとして働くアルバイトは、幅広く助成金の対象となり、特にキャリアアップ助成金を活用した正社員化は、本人のキャリア形成にも大きく貢献します。副業としてのアルバイトは、本業の状況により対象となるかが決まりますが、本業が自営業の場合などは問題なく対象となります。

【契約社員】 フルタイムの契約社員は、労働時間の面では正社員とほぼ同等の扱いとなり、各種助成金を幅広く活用できます。有期契約という特性から、キャリアアップ助成金の正社員化コースの主要な対象者となります。また、専門的な業務に従事する契約社員は、人材開発支援助成金を活用した高度なスキルアップ研修の対象としても最適です。

【派遣社員】 派遣社員については、派遣先企業での助成金活用には一定の制限がありますが、派遣元企業においては各種助成金の対象となります。また、派遣先での直接雇用への転換は、キャリアアップ助成金等の対象となり、優秀な派遣社員を自社の戦力として確保する際に活用できます。

2.よくある誤解の背景

誤解1:正社員限定の制度

誤解の内容 「助成金は正社員を対象にした制度で、パート・アルバイトは関係ない」と思い込んでいる方が多くいます。

真実 むしろ非正規雇用者こそが重点支援対象となっています。

  1. キャリアアップ助成金の存在が何よりの証拠 非正規雇用者専用の助成金として設計されたキャリアアップ助成金は、厚生労働省の助成金の中でも最も予算規模が大きく、活用企業も年々増加しています。これは国が非正規雇用者への支援を最重要視している明確な証拠と言えるでしょう。
  2. 処遇改善への手厚い支援 賃金引上げ、賞与・退職金制度の導入、福利厚生の充実など、非正規雇用者の処遇改善に対する支援メニューは年々充実しています。正社員との格差是正は、もはや企業の社会的責任として認識されており、その取り組みを国が積極的に後押ししているのです。
  3. 政策の重点は今後も継続 少子高齢化による労働力不足が深刻化する中、非正規雇用者の活用と処遇改善は避けて通れない課題です。政府の各種計画でも非正規雇用対策は重要な柱として位置づけられており、関連予算も増額傾向にあります。この流れは今後も継続すると予想されます。

誤解2:社会保険未加入は対象外

誤解の内容 「社会保険に加入していないパート・アルバイトは助成金の対象にならない」という誤解があります。

真実 社会保険加入は多くの助成金で必須要件ではありません。

  1. 雇用保険加入で十分な助成金が多数存在 週20時間以上勤務していれば雇用保険の加入対象となり、これだけで多くの助成金の申請が可能です。キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金、トライアル雇用助成金など、主要な助成金の多くは雇用保険加入が要件となっており、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入は求められていません。
  2. 社会保険加入を促進する助成金も用意 逆に、社会保険への加入を促進するための支援も存在します。短時間労働者の社会保険加入に伴う事業主負担を軽減する措置や、加入を条件とした処遇改善への支援など、段階的に加入を進めていくことが可能です。
  3. 短時間労働者への特別な配慮 週20時間未満の労働者であっても、キャリアアップ助成金の短時間労働者労働時間延長コースなど、一部の助成金では対象となります。また、労働時間を延長して雇用保険加入要件を満たすことへの支援もあり、柔軟な制度設計となっています。

誤解3:短時間勤務は除外

誤解の内容 「週2〜3日勤務のパートは助成金の対象外」と考える方がいます。

真実 短時間勤務でも多くの助成金が活用可能です。

  1. 労働時間別の対応策 週30時間以上働く労働者は、すべての助成金の対象となります。週20〜30時間の労働者も、雇用保険に加入することでほとんどの助成金が活用できます。さらに、週20時間未満の労働者であっても、キャリアアップ助成金の短時間労働者労働時間延長コースなど、一部の助成金では支援対象となっています。重要なのは、現在の労働時間に応じて活用できる助成金を選択することです。
  2. 労働時間延長への充実した支援 短時間勤務から長時間勤務への転換を希望する労働者に対しては、段階的な労働時間の延長を支援する仕組みが整っています。急激な変化ではなく、本人の生活状況に配慮しながら、徐々に労働時間を増やしていくことが可能です。この過程で発生する社会保険料の事業主負担増に対しても、一定の支援が用意されています。
  3. 時間より質を重視する助成金の増加 最近の助成金制度では、労働時間の長さよりも、労働者の能力開発やスキルアップを重視する傾向が強まっています。短時間勤務であっても、専門性の高い業務に従事する労働者や、生産性の高い労働者に対する教育投資は、十分に支援対象となります。

誤解4:学生アルバイトは不可

誤解の内容 「学生アルバイトは助成金の対象にならない」という誤解があります。

真実 学生の状況により、多くの助成金が活用可能です。

  1. 昼間学生の特別な扱い 確かに昼間学生(全日制の学生)は、学業が本分であるという考えから、雇用保険の適用除外とされています。しかし、これには重要な例外があります。卒業見込み証明書を有する者で卒業後も引き続き同一事業所で勤務予定の学生や、休学中の学生などは、一般労働者と同様に雇用保険の対象となり、各種助成金も活用できます。
  2. 夜間・通信制学生は制限なし 夜間部の学生や通信教育を受けている学生は、一般の労働者とまったく同じ扱いとなります。これらの学生は、雇用保険にも加入でき、キャリアアップ助成金、人材開発支援助成金など、すべての助成金の対象となります。働きながら学ぶ意欲的な人材として、むしろ積極的に支援すべき対象と言えるでしょう。
  3. インターンシップの新たな可能性 有給のインターンシップで雇用関係が明確な場合は、助成金の対象となる可能性があります。特に、専門性の高い分野でのインターンシップは、企業にとっても学生にとってもメリットが大きく、教育的な配慮をしながら実務経験を積ませることで、win-winの関係を構築できます。

3.専門的な視点から見た非正規雇用者への助成金活用

社会保険労務士としての見解

当事務所では、パート・アルバイトへの助成金活用を積極的に推進しています。なぜなら、非正規雇用者への投資は、正社員以上に大きなリターンをもたらすことが多いからです。

非正規雇用者への助成金活用の意義:

  1. 人材の質的向上 パート・アルバイトの多くは、適切な教育機会に恵まれていません。人材開発支援助成金を活用して研修を実施すると、予想以上のスキルアップが見られることが多く、即戦力化が図れます。
  2. モチベーションの向上 「パートの私にも研修を受けさせてくれた」「賃金が上がった」という経験は、強いモチベーション向上につながります。結果として、サービス品質の向上や離職率の低下といった効果が表れます。
  3. 優秀人材の発掘 パート・アルバイトの中には、家庭の事情等で正社員として働けないだけで、能力的には非常に優秀な方が多くいます。キャリアアップ助成金を活用した正社員化は、隠れた人材を発掘する絶好の機会です。
  4. 経営の安定化 非正規雇用者の定着率向上は、採用コストの削減、教育コストの効率化、サービス品質の安定化につながり、経営の安定化に大きく寄与します。

非正規雇用者活用のメリット

助成金を活用した非正規雇用者支援には、予想以上に大きなメリットがあります。

  1. コストパフォーマンスの高さ 例えば、パート従業員に10万円の研修を実施した場合、人材開発支援助成金により7.5万円(75%)が助成され、実質負担は2.5万円となります。この投資により、スキルアップした従業員の生産性が向上し、売上が年間100万円増加したとすれば、投資収益率は実に4,000%にも達します。正社員と比較して人件費が抑えられているパート・アルバイトへの教育投資は、極めて高い費用対効果を生み出すのです。
  2. 人材確保における競争優位性 「パートでも成長できる職場」「アルバイトにも教育機会がある会社」というブランディングは、人材獲得競争において大きな差別化要因となります。特に優秀な主婦層や、将来性のある学生アルバイトの確保において、教育制度の充実は強力な武器となります。実際、助成金を活用して研修制度を整備した企業では、求人への応募数が2〜3倍に増加したという事例も珍しくありません。
  3. 組織全体の活性化効果 パート・アルバイトへの投資は、正社員の意識改革にもつながります。「会社は雇用形態に関わらず、全従業員を大切にしている」というメッセージは、組織全体のモチベーション向上をもたらします。また、多様なバックグラウンドを持つ非正規雇用者の能力開発は、新たな視点やアイデアを生み出し、イノベーションの源泉となることも期待できます。
  4. 経営リスクの分散効果 正社員だけでなく、スキルの高いパート・アルバイトを育成することで、人材ポートフォリオの最適化が図れます。繁閑に応じた柔軟な人員配置、固定費の変動費化、急な欠員への対応力向上など、事業継続性の観点からも大きなメリットがあります。

戦略的な活用方法

非正規雇用者への助成金を最大限に活用するための戦略をご紹介します。

  1. 段階的キャリアアップ戦略 最も効果的なのは、段階的にキャリアアップを支援する方法です。まず第1段階として、人材開発支援助成金を活用してスキルアップ研修を実施します。基礎的な業務スキルから始め、徐々に専門性の高い研修へとステップアップしていきます。第2段階では、スキルアップした従業員に対し、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースを活用して処遇改善を行います。能力向上に見合った賃金アップは、モチベーションの維持に不可欠です。第3段階として、優秀な人材についてはキャリアアップ助成金の正社員化コースで正社員への転換を図ります。最終的には、正社員となった元パート・アルバイトが、管理職として活躍することも十分可能です。
  2. 全員参加型の活用アプローチ 特定の優秀な人材だけでなく、すべてのパート・アルバイトに成長の機会を提供することが重要です。全員に基礎研修を実施し、公平に処遇改善を行うことで、組織全体のレベルアップを図ります。これにより、チームワークが向上し、組織の一体感が醸成されます。「選ばれた人だけ」ではなく「全員が主役」という姿勢が、結果的に大きな成果を生み出します。
  3. 業界特性に応じた最適化 業界によって、非正規雇用者に求められるスキルや働き方は異なります。小売業であれば、接客スキル向上研修と賃金改定を組み合わせることで、顧客満足度の向上を図ります。飲食業では、調理技術の向上と正社員化により、料理の質と人材の定着を両立させます。介護業界では、資格取得支援と処遇改善により、サービスの質向上と人材確保を実現します。製造業では、多能工化と労働時間延長により、生産性向上と収入増加を同時に達成します。
  4. 中長期的な人材戦略への組み込み 助成金活用は、単年度の取り組みではなく、中長期的な人材戦略の一環として位置づけるべきです。5年後の組織図を描き、そこに至るまでに必要なスキルセットを明確化します。その上で、現在のパート・アルバイトをどのように育成し、どのようなキャリアパスを提供するかを計画的に設計します。継続的な投資により、パート・アルバイトから始まった人材が、将来の中核人材へと成長していく道筋を作ることができます。

4.パート・アルバイトが使える助成金詳細

1. キャリアアップ助成金(詳細解説)

【正社員化コース】 最も活用されているコースで、パート・アルバイトの正社員化を強力に支援します。

対象となるのは、有期契約で6ヶ月以上雇用されているパート・アルバイトで、正社員への転換に合意している方です。中小企業の場合、有期契約から正規雇用への転換で57万円、有期から無期雇用への転換で28.5万円、無期から正規雇用への転換で28.5万円が支給されます。

成功のポイントは、転換前に就業規則で正社員転換制度を明確に定めておくことです。また、転換後6ヶ月間の雇用維持と、転換前と比較して3%以上の賃金増額が必要となります。これらの要件をクリアすることで、確実に助成金を受給できます。

【賃金規定等改定コース】 すべてのパート・アルバイトの処遇改善に活用できる、使い勝手の良いコースです。

基本給の賃金規定を改定し、3%以上の賃金引上げを行った場合に助成されます。中小企業では、3%以上5%未満の引上げで1人あたり5万円、5%以上の引上げで1人あたり6.5万円が支給されます。1事業所あたり100人まで対象となるため、大規模な処遇改善も可能です。

最低賃金の上昇に対応した賃上げや、人材確保のための待遇改善、従業員のモチベーション向上策として、幅広く活用されています。

2. 人材開発支援助成金(パート・アルバイト向け)

【人材育成支援コース】 パート・アルバイトの基本的な職業訓練を支援する中心的なコースです。

10時間以上のOFF-JT(座学研修)が対象となり、OJTと組み合わせることも可能です。中小企業の場合、研修にかかる経費の45%が助成され、さらに研修時間に対して1時間あたり760円の賃金助成も受けられます。OJTを実施する場合は、1人あたり20万円の実施助成も加算されます。

接客マナー研修、PC基礎研修、商品知識研修など、業務に直結する幅広い研修が対象となるため、パート・アルバイトのスキルアップに最適です。

【人への投資促進コース】 DX時代に対応した、より高度な人材育成を支援するコースです。

デジタル分野の研修については、経費の75%という高率の助成が受けられます。また、最近注目されているサブスクリプション型の研修サービスも対象となり、自発的な能力開発も支援対象に含まれます。

Excel・Word研修、SNS活用研修、ECサイト運営研修など、現代のビジネスに不可欠なデジタルスキルの習得を、パート・アルバイトにも提供できます。

3. 業務改善助成金(全従業員対象)

パート・アルバイトを含む全従業員の賃金引上げと、生産性向上設備の導入を同時に支援する助成金です。

例えば、飲食店がPOSレジを50万円で導入し、パート5名の時給を30円引き上げた場合、設備投資額の90%にあたる45万円が助成されます。これにより、レジ締め時間が50%削減され、その分を接客に充てることで売上向上も期待できます。

最低賃金の引上げに対応しながら、同時に業務効率化を図れる、一石二鳥の助成金です。

4. トライアル雇用助成金

未経験者をパート・アルバイトとして試用雇用する際に活用できる助成金です。

3ヶ月間の試用期間中、月額4万円(最大12万円)が助成されます。この期間を通じて、お互いの適性を確認した上で、本採用や正社員化を検討できます。採用のミスマッチを防ぎながら、人材確保を進められる効果的な制度です。

トライアル雇用期間終了後に、キャリアアップ助成金を活用して正社員化することも可能で、段階的な人材育成戦略の第一歩として最適です。

5.申請時の注意点

1. 雇用形態の正確な把握

確認すべき事項 助成金申請において最も重要なのは、対象となる労働者の雇用形態を正確に把握することです。週の労働時間、月間の勤務日数、雇用期間の定めの有無、雇用保険の加入状況など、一人ひとりの状況を詳細に確認する必要があります。特に、シフト制で勤務時間が変動する場合は、平均的な労働時間を正確に算出することが重要です。

よくあるミス 最も多いミスは、労働時間の計算誤りです。例えば、「週20時間未満」と思っていた労働者が、実際には残業を含めると週20時間を超えており、雇用保険未加入のまま助成金を申請してしまうケースがあります。また、有期契約と無期契約の区別が曖昧なまま申請し、後から対象外と判明することも少なくありません。

2. 就業規則の整備

パート就業規則の重要性 パートタイム労働者が多い事業所では、正社員の就業規則とは別に、パートタイム労働者用の就業規則を作成することを強く推奨します。これにより、正社員への転換ルール、賃金体系、教育訓練の機会など、パート特有の労働条件を明確に定めることができます。助成金申請時には、これらの規定が整備されていることが評価されます。

チェックポイント 就業規則には、パートタイム労働法に準拠した内容を盛り込む必要があります。特に重要なのは、正社員転換制度の具体的なルール、能力や成果に応じた賃金・賞与の決定方法、教育訓練を受ける権利などです。これらが明文化されていることで、助成金申請もスムーズに進みます。

3. 労働条件通知書の重要性

記載必須事項の確認 パート・アルバイトを雇用する際の労働条件通知書は、助成金申請の重要な証拠書類となります。雇用期間、就業場所、従事する業務内容、始業・終業時刻、休憩時間、休日、賃金の決定方法と支払方法、社会保険の加入状況など、法定の記載事項を漏れなく記載する必要があります。

助成金申請での役割 労働条件通知書は、対象労働者が助成金の要件を満たしていることを証明する基本書類です。また、キャリアアップ助成金では処遇改善前後の労働条件を比較する際の基準となり、人材開発支援助成金では訓練期間中の労働条件を確認する資料となります。正確で詳細な記載が、スムーズな審査につながります。

4. 実施タイミング

最適な時期の選定 助成金を活用した取り組みは、タイミングが成功の鍵を握ります。例えば、飲食業であれば、研修は比較的客数の少ない2月や6月に実施し、繁忙期の12月や3月は避けるべきです。正社員化は期首に合わせることで、人事評価制度との整合性が取りやすくなります。賃金改定も、年度始めに実施することで、予算管理がしやすくなります。事業の繁閑や社内の年間スケジュールを考慮した計画立案が重要です。

6.成功事例

事例1:スーパーマーケットA社(パート40名)

初期状況と課題 パート比率が80%と高く、40名のパート従業員で店舗を運営していたA社。慢性的な人手不足に悩み、せっかく採用しても短期間で辞めてしまう状況が続いていました。また、パート間でのスキルのばらつきが大きく、サービス品質が安定しないという問題も抱えていました。

実施した取り組み まず、人材開発支援助成金を活用し、全パートスタッフに対して接客研修を実施しました。研修では、基本的な接客マナーから、商品知識、レジ操作まで体系的に学習。次に、キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースを活用し、全パートの時給を5%引き上げました。さらに、特に優秀な5名のパートスタッフを、キャリアアップ助成金の正社員化コースで正社員に転換しました。

成果と効果 助成金総額は約400万円となり、投資に対する大きな支援を受けることができました。その結果、離職率は40%から15%へと大幅に改善し、採用コストが削減されました。また、体系的な研修により顧客満足度が20%向上し、売上は前年比110%を達成。正社員化された5名は、現在各売り場のリーダーとして活躍しています。

事例2:飲食チェーンB社(アルバイト中心)

初期状況と課題 アルバイト中心で運営する飲食チェーンB社は、平均勤続期間が3ヶ月という極めて短い定着率に悩んでいました。新人教育に追われ、既存スタッフの負担が増大し、サービス品質も安定しない悪循環に陥っていました。

実施した取り組み トライアル雇用助成金を活用し、未経験者10名を3ヶ月間の試用期間付きで採用。この期間中に、人材開発支援助成金を使って調理技術研修を実施し、基礎から応用まで段階的にスキルアップを図りました。また、キャリアアップ助成金を活用して昇給制度を導入し、スキルに応じた処遇改善を実現。優秀なアルバイトは店長候補として正社員化しました。

成果と効果 助成金総額は約300万円を活用。その結果、平均勤続期間が3倍に延び、教育コストが大幅に削減されました。内部登用による店長が誕生し、現場を熟知したマネジメントが可能に。この成功により、新規出店のペースも加速し、事業拡大につながりました。

事例3:介護施設C社(パート職員の活用)

初期状況と課題 慢性的な人手不足に悩む介護施設C社。パート職員は無資格者が多く、できる業務が限定されていました。また、正社員との処遇格差が大きく、パート職員のモチベーション低下が顕著で、サービス品質にも影響が出始めていました。

実施した取り組み 人材開発支援助成金を活用し、全パート職員を対象に介護職員初任者研修を実施。資格取得により、業務の幅が大きく広がりました。さらに、キャリアアップ助成金で資格手当制度を創設し、資格取得者の処遇を改善。正社員転換制度も導入し、フルタイムが難しい方向けに短時間正社員制度も新設しました。

成果と効果 助成金総額は約500万円を活用し、大規模な人材投資を実現。有資格者率が30%から80%へと飛躍的に向上し、サービスの質が大幅に改善されました。パート職員の定着率も向上し、利用者満足度の上昇につながりました。現在では、元パート職員が介護リーダーとして活躍するケースも生まれています。

事例4:製造業D社(繁閑差への対応)

初期状況と課題 季節により繁閑差が大きい製造業D社。繁忙期には人手不足、閑散期には余剰人員という問題を抱えていました。パート従業員の技能不足により、品質のばらつきも大きく、不良率の高さが収益を圧迫していました。

実施した取り組み 人材開発支援助成金を活用し、パート従業員全員に多能工化研修を実施。複数の工程を担当できるようになり、繁閑に応じた柔軟な配置が可能に。キャリアアップ助成金で技能手当を導入し、習得したスキルに応じて処遇を改善。繁忙期には、短時間労働者労働時間延長コースを活用し、本人の希望に応じて労働時間を延長。優秀な人材は無期雇用に転換しました。

成果と効果 助成金総額約250万円を活用した結果、不良率が50%削減され、品質が安定。多能工化により生産性が30%向上し、繁閑差にも柔軟に対応できる体制が構築されました。受注対応力の向上により、新規顧客の獲得にも成功。パート従業員のスキルアップにより、正社員の負担も軽減され、職場全体の雰囲気も改善されました。

7.まとめ

**パート・アルバイトは多くの助成金の対象となります。**むしろ、非正規雇用者の処遇改善や能力開発は、国の重点政策として手厚い支援が用意されています。

押さえておくべき重要ポイント

まず理解すべきは、キャリアアップ助成金が非正規雇用者のために設計された制度だということです。この助成金だけでも、正社員化、賃金改定、賞与・退職金制度の導入など、様々な支援メニューが用意されています。

次に重要なのは、雇用保険加入要件です。週20時間以上勤務していれば雇用保険の加入対象となり、これにより多くの助成金が活用可能になります。社会保険加入は必須ではないことも覚えておいてください。

また、短時間勤務であっても諦める必要はありません。週20時間未満の労働者でも活用できる助成金があり、労働時間を延長することへの支援も用意されています。

投資効果の観点では、パート・アルバイトへの教育投資は、正社員以上に高いリターンをもたらすことが多いという事実も重要です。人件費が抑えられている分、少ない投資で大きな成果を生み出すことができるのです。

最後に、人材確保・定着の観点からも、パート・アルバイトへの助成金活用は極めて有効です。「成長できる職場」というブランディングは、優秀な人材を引き寄せる強力な武器となります。

「うちはパートばかりだから…」と諦めるのではなく、「パートが多いからこそ」助成金を最大限活用できるのです。

当事務所では、企業規模や業種、パート・アルバイトの比率に関わらず、最適な助成金活用プランをご提案しています。非正規雇用者への投資は、必ず大きなリターンとなって返ってきます。

パート・アルバイトの潜在能力を引き出し、組織全体の成長につなげるために、ぜひ助成金を活用してください。まずは、どんな支援が受けられるか、無料診断から始めてみませんか?


※本記事の内容は2025年1月時点の情報に基づいています。制度は変更される可能性がありますので、申請時は必ず最新情報をご確認ください。