会社設立直後でも助成金はもらえる?|設立直後の助成金・補助金活用を徹底解説 - 全国助成金・補助金サポートセンター

会社設立直後でも助成金はもらえる?|設立直後の助成金・補助金活用を徹底解説

「会社を設立したばかりだけど、助成金は申請できるの?」 「実績がない新設法人は、審査で不利になるのでは…」 「設立1年未満だと門前払いされると聞いたけど、本当?」

新しく会社を設立された経営者の方から、このような不安の声をよく聞きます。起業直後は資金需要が最も高い時期であり、助成金や補助金を活用したいと考えるのは当然のことです。しかし、設立直後の企業に対する助成金の扱いについては、様々な情報が錯綜しており、何が正しいのか分からないという方も多いのではないでしょうか。

結論から申し上げると、会社設立直後でも申請できる助成金は確実に存在します。むしろ、設立直後だからこそ活用すべき助成金もあるのです。重要なのは、どの助成金が設立直後でも申請可能なのか、どのような準備が必要なのかを正確に理解することです。

この記事では、助成金専門の社会保険労務士として、設立直後の企業が助成金・補助金を活用する方法について詳しく解説します。申請可能な助成金の種類、必要な準備、審査でのポイント、そしてよくある誤解について、実例を交えながら説明していきます。

【目次】

  1. 会社設立直後でも助成金・補助金はもらえる?
  2. よくある誤解の背景
  3. 専門家の見解
  4. 具体的な事例
  5. まとめ

1.会社設立直後でも助成金・補助金はもらえる?

1-1.設立直後の企業に対する助成金の現状

会社設立直後の企業に対する助成金・補助金の扱いは、その種類によって大きく異なります。まず理解すべきは、「設立後〇年以上」という要件がある助成金は、実はそれほど多くないということです。

多くの助成金は、設立年数よりも「雇用保険適用事業所であること」「労働保険料を滞納していないこと」といった基本的な要件を重視しています。つまり、これらの要件を満たせば、設立直後でも申請可能な助成金は数多く存在するのです。

ただし、設立直後の企業には特有の課題があることも事実です。決算書がない、実績がない、信用力が低いなど、これらの課題をどう克服するかが、助成金獲得の鍵となります。

1-2.設立直後でも申請可能な主な助成金

設立年数に関する要件がない、または緩い助成金を整理すると以下のようになります。

【設立直後でも申請可能な助成金一覧】

助成金の種類 設立要件 主な支給内容
キャリアアップ助成金 なし 正社員化で最大57万円/人
トライアル雇用助成金 なし 試用雇用で月額4万円
人材開発支援助成金 なし 研修費用の最大75%補助
特定求職者雇用開発助成金 なし 高齢者等雇用で最大240万円
地域雇用開発助成金 なし 設備投資+雇用で最大800万円

これらの助成金は、設立直後でも要件を満たせば申請可能です。特に、キャリアアップ助成金やトライアル雇用助成金は、新設企業が人材を確保する際に非常に有効な制度です。

1-3.補助金における設立要件

助成金とは別に、経済産業省系の補助金についても触れておきます。補助金の中には「設立後〇年以上」という要件があるものもありますが、創業支援に特化した補助金も存在します。

創業支援系の補助金 ・小規模事業者持続化補助金(創業枠) ・ものづくり補助金(一部類型) ・IT導入補助金

これらは、むしろ設立直後の企業を優遇する制度設計になっています。

1-4.必要な準備と手続き

設立直後の企業が助成金を申請する際に必要な準備を、時系列で整理します。

会社設立と同時に行うべきこと

  1. 労働保険の加入手続き(設立後10日以内)
  2. 雇用保険適用事業所の設置(従業員雇用時)
  3. 社会保険の新規適用(法人は必須)
  4. 就業規則の作成(10人未満でも推奨)

設立後1ヶ月以内に行うべきこと

  1. 助成金の情報収集と選定
  2. 事業計画書の作成
  3. 雇用計画の策定
  4. 必要に応じて計画認定申請

1-5.審査におけるポイント

設立直後の企業が助成金審査を受ける際、審査官は以下のような点を重視します。

事業の継続性 設立直後で実績がない分、事業計画の現実性と継続可能性が厳しくチェックされます。具体的な売上計画、資金計画、人員計画などを明確に示すことが重要です。

経営者の資質と経験 経営者の過去の経歴、業界経験、経営スキルなどが評価されます。未経験分野での起業の場合は、その分野の専門家との連携体制なども重要な判断材料となります。

財務基盤 決算書がない代わりに、資本金の額、借入金の状況、売上見込みなどから財務基盤を判断されます。自己資金の比率が高いほど評価は高くなります。

労務管理体制 設立直後でも、労働法令を遵守する体制が整っているかが確認されます。就業規則、賃金規程、労働条件通知書などの整備状況が重要です。

2.よくある誤解の背景

【設立直後の助成金に関する誤解と真実】

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誤解1:実績がないと申請できない 誤解:決算書3期分がないと助成金は無理 真実:多くの助成金は決算書不要または代替書類で対応可能

誤解2:信用力が低いから不利 誤解:設立直後は信用がないから審査に通らない 真実:要件を満たせば設立年数に関係なく公平に審査

誤解3:設立1年は待つべき 誤解:とりあえず1年は実績を作ってから申請すべき 真実:設立直後こそ活用すべき助成金も多い

誤解4:大企業優先で相手にされない 誤解:助成金は大企業や既存企業が優先される 真実:むしろ中小企業や新設企業を支援する制度が多い ――――――――――――――――――――――――――――――

これらの誤解は、助成金制度への理解不足や、一部の助成金の要件を全体に当てはめてしまうことから生じています。

3.専門家の見解

3-1.設立直後の企業への実務的アドバイス

助成金専門の社会保険労務士として、多くの新設企業をサポートしてきました。その経験から申し上げると、設立直後こそ助成金活用の絶好のタイミングです。なぜなら、この時期に正しい労務管理体制を構築することで、将来にわたって継続的に助成金を活用できる基盤が作れるからです。

設立直後の企業が陥りがちな失敗は、「まだ早い」と考えて助成金活用を先送りすることです。実際には、従業員を雇用する前、設備投資をする前など、事前の計画が必要な助成金が多いため、早めの準備が成功の鍵となります。

3-2.設立直後だからこその強み

設立直後の企業には、既存企業にはない強みがあります。

クリーンな労務管理 過去の不適切な労務管理の履歴がないため、最初から適正な管理体制を構築できます。これは助成金申請において大きなアドバンテージです。

柔軟な制度設計 既存の慣習にとらわれず、助成金の要件に合わせた制度設計が可能です。就業規則や賃金体系なども、最初から助成金を意識して作成できます。

成長ポテンシャル 審査では、過去の実績だけでなく将来性も評価されます。明確なビジョンと計画を持つ新設企業は、高く評価される可能性があります。

3-3.戦略的な助成金活用プラン

設立直後の企業が、段階的に助成金を活用していくプランをご提案します。

第1段階(設立~6ヶ月) ・労務管理体制の整備 ・トライアル雇用助成金で人材確保 ・必要最小限の体制構築

第2段階(6ヶ月~1年) ・キャリアアップ助成金で正社員化 ・人材開発支援助成金で育成強化 ・業務体制の確立

第3段階(1年~2年) ・設備投資系の助成金活用 ・雇用拡大に向けた助成金申請 ・次なる成長への投資

3-4.リスク管理の重要性

設立直後の企業が助成金を活用する際は、以下のリスクに注意が必要です。

資金繰りリスク 助成金は後払いが原則です。先に支出が発生するため、資金繰りには十分注意が必要です。

要件維持リスク 助成金受給後も一定期間、要件を維持する必要があります。事業計画の変更には慎重になる必要があります。

過度な依存リスク 助成金はあくまで支援制度です。助成金頼みの経営にならないよう、本業の収益確保が最重要です。

4.具体的な事例

事例1:IT企業の戦略的活用(設立3ヶ月のE社)

【事例1の概要】
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背景:エンジニア2名で起業したIT企業    優秀な人材確保が最大の課題

対策:①設立と同時に労務管理体制を完備  ②トライアル雇用で3名を試用雇用  ③適性を見極めて2名を正社員化  ④人材開発支援助成金で技術研修実施

結果:・助成金総額200万円以上を受給  ・優秀なエンジニアの確保に成功  ・設立1年で売上1億円達成  ・現在も継続的に助成金を活用 ――――――――――――――――――――――――――――――

ポイント 設立当初から助成金活用を前提とした体制を構築したことで、スムーズな申請が可能になりました。特に、トライアル雇用を活用したことで、採用リスクを軽減しながら優秀な人材を確保できました。

事例2:飲食店の雇用拡大(設立1ヶ月のF社)

【事例2の概要】 ――――――――――――――――――――――――――――――
背景:個人事業から法人成りした飲食店    店舗拡大に向けて人材確保が急務

対策:①法人設立と同時に社会保険完備  ②特定求職者雇用開発助成金で高齢者雇用  ③キャリアアップ助成金でパートを正社員化  ④地域雇用開発助成金で2号店開設

結果:・助成金で人件費負担を大幅軽減  ・経験豊富な人材の確保に成功  ・計画どおり2号店をオープン  ・地域の雇用創出にも貢献 ――――――――――――――――――――――――――――――

ポイント 個人事業時代の経験を活かしつつ、法人化を機に労務管理体制を一新しました。設立直後から複数の助成金を組み合わせることで、急速な事業拡大を実現できました。

5.まとめ

会社設立直後の助成金・補助金活用について解説してきました。重要なポイントを整理します。

設立直後でも多くの助成金が申請可能です。むしろ、設立直後だからこそ活用すべき助成金も存在します。「まだ早い」という思い込みは捨てましょう。

必要なのは実績ではなく適正な体制です。決算書や実績よりも、労務管理体制の整備と事業計画の明確さが重要です。

早期の準備が成功の鍵です。多くの助成金は事前の計画認定が必要です。従業員を雇用する前、設備投資をする前に準備を始めましょう。

設立直後の強みを活かしましょう。クリーンな労務管理、柔軟な制度設計、成長ポテンシャルは、新設企業ならではの強みです。

設立直後は資金需要が最も高い時期です。だからこそ、活用できる助成金・補助金は積極的に活用すべきです。ただし、助成金はあくまで経営支援のツールであり、本業の成功があってこそ意味があることを忘れてはいけません。

正しい知識と適切な準備により、設立直後でも助成金を有効活用できます。この記事が、新たな事業の船出を支援する一助となれば幸いです。


※本記事の内容は2025年1月時点の情報に基づいています。制度は変更される可能性がありますので、実際の申請時は最新情報をご確認ください。