補助金申請で「不採択」になる典型的パターン7選|審査員が見ている3つのポイント

  • 【目次】
  1. 1. 審査員が見ている3つのポイント
  2. 2. 不採択パターン①:販路開拓計画が曖昧
  3. 3. 不採択パターン②:数値目標に根拠がない
  4. 4. 不採択パターン③:設備投資の必要性が不明確
  5. 5. 不採択パターン④:自己資金・融資計画が不十分
  6. 6. 不採択パターン⑤:事業の新規性が示されていない
  7. 7. 不採択パターン⑥:申請書の記載が不十分・不明瞭
  8. 8. 不採択パターン⑦:加点項目を活用していない
  9. 9. まとめ:不採択を避けるためのチェックリスト

はじめに

補助金申請で不採択になる企業には、共通する典型的なパターンが存在します。年間数百件の申請書を審査する審査員によると、不採択案件の約80%は「同じような理由」で落とされているとのことです。

本記事では、補助金申請で不採択になる典型的パターン7選と、審査員が重視している3つのポイントを解説します。この記事を読めば、不採択の「落とし穴」を事前に回避し、採択率を大幅に向上させることができるでしょう。

 

審査員が見ている3つのポイント

1-1. 事業の実現可能性

審査員が最も重視するのは、「この事業計画は本当に実現できるのか」という点です。

チェック項目
– 売上計画は現実的か
– 資金調達計画は具体的か
– 実施体制は整っているか

 

1-2. 補助金の費用対効果

補助金は税金から支出されるため、「この補助金が社会にどれだけの価値を生むか」が問われます。

チェック項目
– 補助金額に見合う成果が期待できるか
– 雇用創出や地域経済への貢献があるか
– 投資回収期間は適切か

 

1-3. 申請書の完成度

どんなに優れた事業計画でも、申請書の記載が不十分では伝わりません。

チェック項目
– 必要事項が漏れなく記載されているか
– 論理的で分かりやすい構成か
– 誤字脱字はないか

| 審査ポイント | 配点比率 | 不採択の主要因となる割合 |
|—|—|—|
| **事業の実現可能性** | 40% | 50% |
| **補助金の費用対効果** | 35% | 30% |
| **申請書の完成度** | 25% | 20% |

不採択パターン①:販路開拓計画が曖昧

2-1. よくある失敗例

NG例 「新しい設備を導入して、幅広い顧客にアプローチします。」

この例では、「誰に」「何を」「どのように」売るのかが全く不明確です。

 

2-2. 改善のポイント

OK例: 「30〜40代の女性、共働き世帯、〇〇市内在住という顧客層に対して、時短調理キットを、自社ホームページとInstagram広告で販売します。この顧客層は〇〜市の人口統計によると約5,000世帯存在し、月間50件の受注を目標とします。」

 

2-3. 販路開拓計画に必須の要素

| 必須要素 | 具体例 |
|—|—|
| **ターゲット顧客** | 30〜40代女性、共働き世帯 |
| **商品・サービス** | 時短調理キット |
| **販売チャネル** | 自社HP、Instagram広告 |
| **販売目標** | 月間50件、年間600件 |
| **根拠** | 市場規模5,000世帯、獲得率1% |

不採択パターン②:数値目標に根拠がない

3-1. よくある失敗例

NG例: 「売上を3年で2倍にします。」

なぜ2倍にできるのか、その根拠が示されていません。

 

3-2. 改善のポイント

OK例: 「現在の月間売上300万円を、3年後に600万円にします。新設備により生産能力が1.5倍になり、新規顧客開拓により顧客数が1.3倍になることで、合計1.95倍(約2倍)の売上増を見込んでいます。」

 

3-3. 数値目標の根拠の示し方

根拠の構成要素:
1. 現状の数値(売上、顧客数など)
2. 設備投資による変化(生産能力、品質向上など)
3. 販路開拓による変化(新規顧客数など)
4. 最終的な目標数値
5. 計算式の明示

不採択パターン③:設備投資の必要性が不明確

4-1. よくある失敗例

NG例: 「〇〇機械を導入します。価格は500万円です。」

なぜその設備が必要なのか、他の選択肢はないのか、が説明されていません。

 

4-2. 改善のポイント

OK例: 「現在、手作業で行っている〇〇工程は、1日8時間で10個しか生産できず、受注に対応できていません。〇〇機械を導入することで、1日8時間で30個生産可能となり、受注機会損失を解消できます。他の選択肢として、人員増も検討しましたが、人材確保が困難であり、設備投資が最適と判断しました。」

 

4-3. 設備投資の必要性を示す要素

| 要素 | 内容 |
|—|—|
| **現状の課題** | 生産能力不足、品質のばらつきなど |
| **設備導入による解決** | 生産能力3倍、品質安定化など |
| **他の選択肢との比較** | 人員増、外注との比較 |
| **投資対効果** | 投資回収期間、利益増加額 |

不採択パターン④:自己資金・融資計画が不十分

5-1. よくある失敗例

NG例: 「補助金で1,000万円、残りは自己資金と融資で調達します。」

具体的な金額や融資元が示されていません。

 

5-2. 改善のポイント

OK例: 「総投資額3,000万円のうち、補助金1,000万円、自己資金800万円、日本政策金融公庫からの融資1,200万円で調達します。融資については、既に事前相談を行い、融資可能性の確認を得ています。」

 

5-3. 資金調達計画に必須の要素

| 要素 | 具体例 |
|—|—|
| **総投資額** | 3,000万円 |
| **補助金額** | 1,000万円 |
| **自己資金額** | 800万円(内部留保500万円、経営者資金300万円) |
| **融資額** | 1,200万円(日本政策金融公庫) |
| **融資の実現可能性** | 事前相談済み、融資内諾取得済みなど |

不採択パターン⑤:事業の新規性が示されていない

6-1. よくある失敗例

NG例: 「新しい機械を導入します。」

「新しい」だけでは、何が新規なのか不明確です。

 

6-2. 改善のポイント

OK例: 「当社では初めてとなる自動化設備を導入します。これにより、従来は手作業で3時間かかっていた工程が30分に短縮され、業界平均の2倍の生産性を実現します。この生産性向上により、従来は対応できなかった小ロット・短納期案件に対応可能となり、新たな顧客層を開拓できます。」

 

6-3. 新規性の示し方

| 新規性の観点 | 具体例 |
|—|—|
| **自社にとって新しい** | 初の自動化、初のIT導入 |
| **地域にとって新しい** | 地域初の高精度加工 |
| **顧客にとって新しい** | 新しい価値提供(短納期、高品質) |
| **業界にとって新しい** | 業界では珍しい技術の応用 |

不採択パターン⑥:申請書の記載が不十分・不明瞭

7-1. よくある失敗例

– 文章が長すぎて要点が分からない
– 専門用語が多く、審査員に伝わらない
– 誤字脱字が多い
– 必要な添付書類が不足している

 

7-2. 改善のポイント

申請書作成の鉄則:
1. 1文は50文字以内を目安に
2. 専門用語には必ず説明を添える
3. 図表・写真を効果的に活用
4. 提出前に第三者にチェックしてもらう
5. 必要書類リストを作成し、漏れをチェック

 

7-3. 申請書の構成

| セクション | 記載内容 | 文字数目安 |
|—|—|—|
| **事業概要** | 事業の目的、実施内容 | 300〜500文字 |
| **現状の課題** | 解決すべき課題 | 200〜300文字 |
| **事業内容** | 具体的な取り組み | 500〜800文字 |
| **投資効果** | 売上・利益の見込み | 300〜500文字 |
| **資金調達計画** | 補助金・自己資金・融資 | 200〜300文字 |

不採択パターン⑦:加点項目を活用していない

8-1. 加点項目とは

多くの補助金には、基本審査に加えて「加点項目」が設定されています。加点項目を満たすことで、採択率が大幅に向上します。

 

8-2. 主な加点項目

| 加点項目 | 内容 | 加点効果 |
|—|—|—|
| **賃上げ計画** | 従業員の給与を年率1.5%以上引き上げ | 大 |
| **事業承継・M&A** | 事業承継やM&Aを伴う事業 | 中 |
| **地域経済への貢献** | 地域雇用の創出、地域資源の活用 | 中 |
| **グリーン化** | 省エネ・脱炭素に貢献 | 中 |
| **デジタル化** | IT・IoTの活用 | 小 |

 

8-3. 加点項目活用のポイント

加点項目は、事業計画に無理なく組み込めるものを選びましょう。例えば、「賃上げ計画」は多くの企業で実現可能です。

まとめ:不採択を避けるためのチェックリスト

補助金申請で不採択を避けるためには、以下のチェックリストを活用しましょう。

| チェック項目 | 確認内容 |
|—|—|
| 販路開拓計画 | □ 「誰に」「何を」「どのように」売るかが明確か?□ 販売目標に根拠があるか? |
| 数値目標 | □ 売上・利益目標に具体的な根拠があるか?□ 計算式が明示されているか? |
| 設備投資の必要性 | □ 現状の課題が明確か?□ 他の選択肢との比較がされているか? |
| 資金調達計画 | □ 自己資金・融資の具体的な金額が示されているか?□ 融資の実現可能性が示されているか? |
| 事業の新規性 | □ 何が新規なのかが明確か?□ 新規性による効果が示されているか? |
| 申請書の完成度 | □ 誤字脱字はないか?□ 専門用語に説明が添えられているか?<br>□ 必要書類は揃っているか? |
| 加点項目 | □ 活用できる加点項目を確認したか?□ 加点項目を事業計画に組み込んだか? |

これらのポイントを一つひとつ丁寧に確認し、申請書をブラッシュアップすることで、採択率は大きく高まります。ぜひ、諦めずに挑戦してください。

補助金・助成金申請でお困りの方へ

補助金・助成金の申請は、制度の選定から事業計画書の作成、必要書類の準備まで、多くの専門知識と時間を要します。特に、不採択を避けるためには、審査員の視点を理解し、説得力のある申請書を作成することが不可欠です。

実は、多くの社会保険労務士は助成金には詳しくても、補助金の申請支援については十分な経験やノウハウを持っていないケースが少なくありません。また、助成金と補助金では制度の目的も申請プロセスも大きく異なるため、それぞれに特化した専門性が必要です。

当センターでは、各種補助金・助成金の申請支援において、豊富な実績とノウハウを持つ専門家が、あなたの事業計画の策定から申請書類の作成、採択後のフォローまで、一貫してサポートいたします。

– 「不採択になった理由が分からない」
– 「採択率を高めるためのアドバイスが欲しい」
– 「申請書の書き方が分からない」
– 「加点項目を最大限活用したい」
– 「専門家に申請書をチェックしてほしい」

このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽に当センターまでご相談ください。