製造業向け|省力化投資補助金で1,000万円獲得した事例と申請のポイント
- 【目次】
- 1. 省力化投資補助金とは?制度の基本情報
- 2. 製造業が省力化投資補助金を活用すべき3つの理由
- 3. 【事例①】金属加工業が1,000万円獲得した成功事例
- 4. 【事例②】食品製造業が800万円獲得した成功事例
- 5. 申請のポイント①:省人化効果の明確化
- 6. 申請のポイント②:投資回収計画の作成
- 7. 申請のポイント③:加点項目の最大活用
- 8. まとめ:省力化投資補助金の申請チェックリスト
はじめに
製造業は、人手不足と労働コストの上昇という二重の課題に直面しています。この課題を解決する鍵となるのが、省力化設備の導入です。そして、その投資を後押しするのが「省力化投資補助金」です。
本記事では、実際に省力化投資補助金で1,000万円を獲得した製造業の事例を紹介し、申請のポイントを詳しく解説します。この記事を読めば、あなたの会社でも省力化投資補助金を活用し、人手不足を解消しながら生産性を向上させることができるでしょう。
省力化投資補助金とは?制度の基本情報
1-1. 制度概要
省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業が、IoTやロボットなどの省力化設備を導入する際に活用できる補助金です。2024年度から本格的に開始された比較的新しい制度です。
制度の基本情報:
| 項目 | 内容 |
|—|—|—|
| 補助上限額 | 最大1,500万円 |
| 補助率 | 1/2 |
| 対象経費 | IoT、ロボット、自動化設備など |
| 対象事業者 | 中小企業・小規模事業者 |
| 公募頻度 | 年2〜3回 |
| 採択率 | 50〜70%(比較的高い) |
1-2. 対象となる設備
対象設備の例:
– 産業用ロボット(溶接、組立、搬送など)
– 自動検査装置
– 自動梱包機
– IoT機器(センサー、制御システムなど)
– 協働ロボット(コボット)
1-3. 他の補助金との違い
| 補助金名 | 目的 | 補助上限額 | 特徴 |
|—|—|—|
| 省力化投資補助金 | 人手不足対策 | 1,500万円 | 省人化効果が必須 |
| ものづくり補助金 | 生産性向上 | 750万円〜5,000万円 | 幅広い設備が対象 |
| IT導入補助金 | IT化推進 | 450万円 | ソフトウェア中心 |
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製造業が省力化投資補助金を活用すべき3つの理由
2-1. 人手不足の深刻化
製造業の有効求人倍率は2.5倍を超えており、求人を出しても人が集まらない状況が続いています。省力化設備の導入により、少ない人員で生産を維持できます。
2-2. 労働コストの上昇
最低賃金の引き上げや社会保険料の増加により、労働コストは年々上昇しています。省力化により、人件費を削減し、収益性を向上させることができます。
2-3. 採択率が高い
省力化投資補助金は、他の補助金と比べて採択率が高い傾向があります。人手不足が社会的課題として認識されており、政府も積極的に支援しているためです。
| 理由 | 効果 | 数値目安 |
|—|—|—|
| 人手不足の深刻化 | 少人数で生産維持 | 3名→1名など |
| 労働コストの上昇 | 人件費削減 | 年間1,800万円削減など |
| 採択率が高い | 補助金獲得の可能性大 | 50〜70% |
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【事例①】金属加工業が1,000万円獲得した成功事例
3-1. 企業プロフィール
– 業種: 金属加工業(自動車部品製造)
– 従業員数: 15名
– 年商: 3億円
– 課題: 溶接工の高齢化と人手不足
3-2. 導入設備と投資額
導入設備: 溶接ロボット2台
投資総額: 2,000万円
補助金額: 1,000万円(補助率1/2)
自己負担: 1,000万円
3-3. 導入効果
| 項目 | 導入前 | 導入後 | 改善効果 |
|—|—|—|—|
| 溶接工の人数 | 5名 | 2名 | 3名削減 |
| 月間生産量 | 5,000個 | 8,000個 | 1.6倍 |
| 不良率 | 3% | 0.5% | 83%削減 |
| 年間人件費 | 2,400万円 | 960万円 | 1,440万円削減 |
| 投資回収期間 | – | 1.4年 | – |
3-4. 採択のポイント
成功要因:
1. 明確な省人化効果: 5名→2名という具体的な削減数を示した
2.生産性向上: 生産量1.6倍、不良率83%削減という数値を提示
3.投資回収期間: 1.4年という短期間での回収を示した
4.人手不足の深刻さ: 溶接工の平均年齢58歳、後継者不在という現状を説明
3-5. 申請書の記載例(抜粋)
「当社は自動車部品の溶接加工を行っていますが、溶接工5名の平均年齢は58歳であり、後継者の確保が困難な状況です。求人を出しても応募がなく、このままでは事業継続が危ぶまれます。溶接ロボット2台を導入することで、溶接工を5名から2名に削減し、若手でも対応可能な作業に転換します。これにより、年間1,440万円の人件費削減と、生産量1.6倍を実現します。」
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【事例②】食品製造業が800万円獲得した成功事例
4-1. 企業プロフィール
– 業種: 食品製造業(惣菜製造)
– 従業員数: 20名
– 年商: 2億円
– 課題: パート従業員の確保困難
4-2. 導入設備と投資額
導入設備: 自動盛付機、自動包装機
投資総額: 1,600万円
補助金額: 800万円(補助率1/2)
自己負担: 800万円
4-3. 導入効果
| 項目 | 導入前 | 導入後 | 改善効果 |
|—|—|—|—|
| パート従業員 | 10名 | 4名 | 6名削減 |
| 日間生産量 | 2,000食 | 3,500食 | 1.75倍 |
| 作業時間 | 8時間 | 5時間 | 37.5%削減 |
| 年間人件費 | 1,800万円 | 720万円 | 1,080万円削減 |
| 投資回収期間 | – | 1.5年 | – |
4-4. 採択のポイント
成功要因:
1. 深刻な人手不足: パート従業員の時給を上げても人が集まらない現状を説明
2. 衛生面の向上: 手作業から機械化により、衛生管理が向上することを強調
3. 地域貢献: 地域の高齢者向け配食サービスの拡大に貢献
4. 具体的な数値: 6名削減、生産量1.75倍という明確な効果
4-5. 申請書の記載例(抜粋)
「当社は高齢者向け配食サービス用の惣菜を製造していますが、パート従業員10名の確保が困難な状況です。時給を1,200円に引き上げても応募がなく、受注を断らざるを得ません。自動盛付機と自動包装機を導入することで、パート従業員を10名から4名に削減し、日間生産量を2,000食から3,500食に増やします。これにより、地域の高齢者向け配食サービスの拡大に貢献します。」
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申請のポイント①:省人化効果の明確化
5-1. 「何名削減できるか」を具体的に示す
省力化投資補助金では、「何名の人員を削減できるか」が最も重要な審査ポイントです。
NG例: 「人手不足を解消します」
OK例: 「現在5名の作業員を2名に削減できます(3名削減)」
5-2. 削減人員の根拠を示す
| 工程 | 現状の作業時間 | 導入後の作業時間 | 削減人員 |
|—|—|—|—|
| 溶接工程 | 5名×8時間=40時間 | 2名×8時間=16時間 | 3名削減 |
| 検査工程 | 2名×8時間=16時間 | 1名×8時間=8時間 | 1名削減 |
| 梱包工程 | 3名×8時間=24時間 | 1名×8時間=8時間 | 2名削減 |
| 合計 | 10名 | 4名 | **6名削減** |
5-3. 削減した人員の配置転換を説明
削減した人員を解雇するのではなく、他の工程に配置転換することを示すと、審査員の印象が良くなります。
配置転換の例:
「削減した3名は、新規受注に対応する別ラインに配置転換し、全体の生産量を1.5倍に増やします。」
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申請のポイント②:投資回収計画の作成
6-1. 年間削減コストの算出
人件費削減の計算例:
– 削減人員: 3名
– 年間人件費(1名あたり): 600万円(給与+社会保険料)
– 年間削減額: 600万円 × 3名 = 1,800万円
6-2. 投資回収期間の算出
投資回収期間の計算:
– 投資総額: 2,000万円
– 補助金: 1,000万円
– 自己負担: 1,000万円
– 年間削減額: 1,800万円
– 投資回収期間: 1,000万円 ÷ 1,800万円 = 0.56年(約7ヶ月)
6-3. 投資回収計画表の作成
| 年次 | 年間削減額 | 累積削減額 | 自己負担残高 |
|—|—|—|—|
| 1年目 | 1,800万円 | 1,800万円 | 0円(回収完了) |
| 2年目 | 1,800万円 | 3,600万円 | – |
| 3年目 | 1,800万円 | 5,400万円 | – |
| 5年間合計 | 9,000万円 | – | – |
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申請のポイント③:加点項目の最大活用
7-1. 主な加点項目
省力化投資補助金には、以下のような加点項目があります。
| 加点項目 | 内容 | 加点効果 |
|—|—|—|
| 賃上げ計画 | 従業員の給与を年率1.5%以上引き上げ | 大 |
| 地域経済への貢献 | 地域雇用の維持、地域資源の活用 | 中 |
| グリーン化 | 省エネ・脱炭素に貢献 | 中 |
| 事業承継・M&A | 事業承継やM&Aを伴う事業 | 中 |
7-2. 賃上げ計画の作成例
賃上げ計画の記載例:
「省力化により削減した人件費の一部を、残りの従業員の賃上げに充てます。具体的には、全従業員の基本給を年率2.0%引き上げ、3年間で6%の賃上げを実現します。」
7-3. 地域経済への貢献の示し方
地域貢献の記載例:
「当社は地域唯一の金属加工業者であり、地域の製造業20社から受注しています。省力化により生産能力を向上させることで、地域製造業の競争力強化に貢献します。」
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まとめ:省力化投資補助金の申請チェックリスト
省力化投資補助金を活用して設備投資を行うためには、以下のチェックリストを活用しましょう。
| チェック項目 | 確認内容 |
|—|—|
| 省人化効果 | □ 削減人員数を具体的に示したか?□ 削減人員の根拠を示したか?□ 削減した人員の配置転換を説明したか? |
| 投資回収計画 | □ 年間削減コストを算出したか?□ 投資回収期間を算出したか?□ 投資回収計画表を作成したか? |
| 加点項目 | □ 賃上げ計画を策定したか?□ 地域経済への貢献を示したか?□ グリーン化効果を記載したか? |
| 申請書の質 | □ 人手不足の深刻さを説明したか?□ 具体的な数値を示したか?□ 専門家によるチェックを受けたか? |
製造業の人手不足は、今後さらに深刻化すると予想されます。省力化投資補助金を活用し、早めに省力化設備を導入することで、競争力を維持・向上させることができます。ぜひ、本記事のポイントを参考に、補助金申請に挑戦してください。
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補助金・助成金申請でお困りの方へ
補助金・助成金の申請は、制度の選定から事業計画書の作成、必要書類の準備まで、多くの専門知識と時間を要します。特に、省力化投資補助金では、省人化効果の明確化や投資回収計画の作成など、具体的な数値の裏付けが求められます。
実は、多くの社会保険労務士は助成金には詳しくても、補助金の申請支援については十分な経験やノウハウを持っていないケースが少なくありません。また、助成金と補助金では制度の目的も申請プロセスも大きく異なるため、それぞれに特化した専門性が必要です。
当センターでは、各種補助金・助成金の申請支援において、豊富な実績とノウハウを持つ専門家が、あなたの事業計画の策定から申請書類の作成、採択後のフォローまで、一貫してサポートいたします。
– 「省力化投資補助金で1,000万円獲得したい」
– 「省人化効果の計算方法が分からない」
– 「投資回収計画の作り方を教えてほしい」
– 「採択率を高めるためのアドバイスが欲しい」
– 「専門家に申請をサポートしてほしい」
このようなお悩みをお持ちの方は、ぜひお気軽に当センターまでご相談ください。
