これだけは知っておきたい!助成金の対象条件とは
「助成金に興味はあるけれど、うちの会社は対象になるの?」「どんな条件を満たせば助成金がもらえるの?」そうお悩みの経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。助成金は返済不要の貴重な資金ですが、誰でも、どんな取り組みでももらえるわけではありません。特定の「対象条件」を満たす必要があります。
この「日本一の助成金HPのプロのライター」が、助成金を受け取るためにこれだけは知っておきたい基本的な対象条件を、わかりやすく徹底的に解説します。中小企業が陥りやすい落とし穴や、申請前に必ずチェックすべきポイントまで網羅的にご紹介しますので、自社が助成金の対象となるかを確認し、賢く活用するためにお役立てください。
【目次】
1. 助成金申請の「大前提」となる3つの基本条件
助成金は、国や地方自治体が特定の政策目標を達成するために企業を支援する制度です。そのため、どの助成金にも共通する「大前提」となる基本的な条件が存在します。
1-1. 雇用保険適用事業主であること
ほとんどの助成金、特に厚生労働省が所管する雇用関係助成金は、その財源が雇用保険料です。そのため、以下の条件を満たす雇用保険の適用事業主であることが大前提となります。
- 労働保険の加入義務: 労働者を一人でも雇用していれば、原則として労働保険(雇用保険・労災保険)に加入する義務があります。個人事業主でも、常時5人以上の従業員を使用している場合は加入義務があります。
- 雇用保険料を適切に納付していること: 過去に雇用保険料の滞納がないこと、または滞納があっても既に完納していることが条件となります。
- 【注意点】: 雇用保険料の納付が滞っている場合は、助成金の申請資格が得られないだけでなく、過去に遡って不足分を徴収されたり、延滞金が発生したりする可能性があります。
1-2. 労働関係法令を遵守していること
助成金は、企業の健全な経営を支援するための制度であるため、労働関係法令を遵守している企業であることが必須条件となります。具体的には、以下のような状況は助成金申請の妨げとなります。
- 過去に労働関係法令違反がないこと: 労働基準法、労働安全衛生法、最低賃金法、男女雇用機会均等法などの法令に違反し、是正勧告を受けている、または過去に重大な違反があった場合。
- 労働保険・社会保険への未加入がないこと: 従業員の雇用保険、健康保険、厚生年金保険への加入義務を果たしていない場合。
- 就業規則が適切であること: 労働基準監督署に届け出ている就業規則が、最新の法令に準拠し、かつ助成金の要件を満たしていること。特に、育児介護休業規定や賃金規定など、助成金に関わる規定が重要です。
- 違法な労働環境ではないこと: 長時間労働の是正勧告を受けている、サービス残業が常態化しているなど、従業員にとって不当な労働環境でないことが求められます。
1-3. 助成金申請事業年度で解雇を行っていないこと(一部助成金を除く)
多くの雇用関係助成金では、申請を行う事業年度またはその前年度に、事業主都合による解雇(リストラなど)を行っていないことが条件となります。これは、助成金の目的が「雇用の安定」にあるため、安易な解雇を抑制する意図があります。
- 注意点: 例外として、天災等のやむを得ない事情による場合や、労働者の責めに帰すべき重大な理由による懲戒解雇は、解雇にカウントされないことがあります。しかし、原則として事業主都合の解雇は避けるべきです。
- 対象期間: 解雇の有無が問われる期間は、助成金の種類によって異なりますが、申請日から過去6ヶ月間、または1年間といったケースが多いです。
2. 助成金ごとの「個別具体的な」対象条件
大前提となる基本条件を満たしていることに加え、各助成金にはそれぞれ個別具体的な対象条件が細かく定められています。これらを正確に理解することが、受給への鍵となります。
2-1. 対象となる事業主の条件
- 事業規模: 中小企業のみが対象となる助成金が多数あります。中小企業の定義(資本金、従業員数)は、業種によって異なるため確認が必要です。
- 設立年数: 設立から一定期間(例:1年以上)が経過していることが条件となる場合があります。
- 業種: 特定の業種(例:製造業、建設業など)のみを対象とする助成金もあります。
- 地域: 特定の地域(例:過疎地域、特定の産業集積地)にある事業所のみを対象とする地域限定型の助成金もあります。
- 消費税を納めていること(一部補助金): 補助金の中には、消費税の納税義務がある事業者が対象となるケースもあります。
2-2. 対象となる労働者の条件
助成金は、その目的によって「誰」に対してどのような取り組みをするかが重要になります。
- 雇用形態:
- 正社員: 新規雇用、能力開発、両立支援など。
- 有期雇用労働者(パート、契約社員など): 正社員化、処遇改善、能力開発など(キャリアアップ助成金など)。
- 派遣労働者: 正社員化、無期雇用化など。
- 属性:
- 高年齢者: 60歳以上、65歳以上など(高年齢者雇用安定助成金など)。
- 障害者: 身体障害、精神障害、知的障害など(特定求職者雇用開発助成金など)。
- 母子・父子家庭の親: 特定求職者雇用開発助成金など。
- 若年者: 35歳未満、30歳未満など。
- 勤務状況:
- 雇用保険被保険者: 助成金を受けようとする取り組みの対象となる従業員が、雇用保険に加入していることが条件です。
- 勤続期間: 一定期間(例:6ヶ月以上)継続して勤務していること。
- 出勤率: 休業助成金などで、一定の出勤率が求められることがあります。
- 賃金: 賃金に関する助成金(業務改善助成金など)では、最低賃金以上の支払い、賃上げ率などが問われます。
2-3. 対象となる「取り組み」の条件
助成金は、特定の「取り組み」を行うことに対して支給されます。計画性や客観性が求められます。
- 計画書の提出と認定: 多くの助成金で、取り組みを開始する前に計画書を提出し、認定を受けることが必須です。この順序を間違えると、助成金は受給できません。
- 明確な目的: 助成金の目的に合致した取り組みであること。例えば、人材育成助成金なら「従業員の能力向上」が目的である研修である必要があります。
- 客観的な実施証明: 研修の実施であれば、受講者名簿、研修カリキュラム、講師の領収書、写真など、客観的に実施されたことを証明できる証拠が必要です。
- 法令順守の取り組み: 働き方改革推進助成金のように、労働時間短縮や年休取得促進など、法令順守を促す取り組みが対象となります。
- 就業規則の整備: 育児休業制度の導入など、就業規則の改定や整備が必須となる場合があります。
2-4. 助成金支給のタイミングと会計処理
助成金は、取り組みの実施や費用発生後に支給される「後払い」が基本です。
- 自己資金の準備: 助成金が振り込まれるまでに数ヶ月〜1年以上かかるため、その間の事業資金や、対象経費を賄うための自己資金が必要となります。
- 課税対象: 助成金は企業の「収入」として扱われるため、法人税や所得税の課税対象となります。受給が決まったら、税理士に相談し適切な会計処理を行いましょう。
3. 助成金申請で「対象外」と判断される主なケース
せっかく準備しても、以下のいずれかに該当すると、助成金の対象外となる可能性が高まります。
- 助成金申請事業年度に事業主都合による解雇を行った:
- 例外: 災害などによる事業活動の縮小や、労働者の責めに帰すべき重大な理由による懲戒解雇は対象外となる場合があります。詳細は各助成金の公募要領を確認してください。
- 労働保険料・社会保険料の滞納がある:
- 税金と同様に、公的資金である助成金の受給には、公的な義務の履行が求められます。
- 労働関係法令に違反している:
- 違法な長時間労働、残業代未払い、最低賃金未満の賃金支払いなど、労働関係法令を遵守していない事業主は対象外です。
- 過去に助成金の不正受給がある:
- 一度でも不正受給と判断された場合、以降の助成金申請は厳しく制限されるか、永久に不可能となることもあります。
- 提出書類に虚偽の内容や重大な不備がある:
- 書類の不備は審査の遅延を招き、虚偽の内容は不正受給とみなされます。
- 暴力団員や暴力団と関係がある:
- 反社会的勢力との関係が認められる企業は、助成金の対象外となります。
4. まとめ:助成金の対象条件を理解し、計画的に活用しよう
助成金は、返済不要で企業の成長を後押しする非常に強力なツールです。しかし、その恩恵を受けるためには、以下の「対象条件」を正確に理解し、計画的に準備を進めることが不可欠です。
- 大前提の条件: 雇用保険適用事業主であること、労働関係法令を遵守していること、特定の解雇を行っていないこと。
- 個別具体的な条件: 助成金ごとに異なる事業主、労働者、取り組みの条件。
これらの条件は、単に助成金をもらうためだけでなく、企業のコンプライアンス強化や健全な労務管理に繋がる重要な要素でもあります。
もし、自社が対象条件を満たしているか不安な場合や、申請手続きが複雑で難しいと感じる場合は、社会保険労務士などの専門家に相談することを強くお勧めします。専門家は、最新の情報を把握し、貴社の状況に合わせた最適なアドバイスとサポートを提供してくれます。
助成金の対象条件を正しく理解し、賢く活用することで、貴社の人材戦略や事業成長を加速させ、より強固な経営基盤を築いていきましょう。
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