【失敗事例から学ぶ】補助金申請でよくある5つのミスと回避方法
- 【目次】
- ミス①: 交付決定前に発注・支払いしてしまう
- ミス②: 賃上げ額や対象人数が要件を満たしていない
- ミス③: 見積書が1社のみ、仕様が曖昧
- ミス④: 労務関連書類の不備
- ミス⑤: 実績報告での不備
- まとめ:ミスを回避し、確実に補助金を受給するためのチェックリスト
ミス①: 交付決定前に発注・支払いしてしまう
1-1. 致命的な失敗パターン
補助金・助成金は、「交付決定通知」が出る前に発注・契約・支払いをすると対象外になります。これは、多くの補助金・助成金に共通する基本的なルールですが、実際には非常に多くの事業者がこのミスを犯しています。
1-2. よくあるケース
例: 飲食店A社のケース
A社は、業務改善助成金を活用して、厨房の業務用オーブンを導入する計画を立てました。申請書類を提出し、「これで承認されるだろう」と考え、納期が迫っていたため、交付決定通知を待たずに業者に発注してしまいました。
しかし、補助金・助成金の交付決定は、申請書類を提出してから数週間から数ヶ月かかることがあります。A社の場合、発注後に交付決定通知が届きましたが、「交付決定前の発注は対象外」というルールにより、助成金を受け取ることができませんでした。
1-3. なぜこのミスが起きるのか
このミスが起きる主な理由は、以下の通りです。
•納期への焦り: 設備の納期が迫っており、交付決定を待っていては間に合わないと判断してしまう。
•ルールの誤解: 「申請書を提出すれば、もう大丈夫だろう」という誤った認識。
•業者からの催促: 業者から「早く発注してください」と催促され、つい応じてしまう。
1-4. 対策
必ず交付決定通知を受け取ってから発注する
どんなに納期が迫っていても、交付決定通知を受け取るまでは、絶対に発注・契約・支払いを行わないでください。交付決定通知には、「交付決定日」が明記されています。この日付以降に発注した経費のみが、補助金・助成金の対象となります。
専門家は、「必ず 交付決定後に発注 してください」と強調しています。
スケジュールに余裕を持つ
申請から交付決定までの期間を見越して、事業計画を立てることが重要です。公募要領には、交付決定までの目安期間が記載されていることが多いので、それを参考にスケジュールを組みましょう。
ミス②: 賃上げ額や対象人数が要件を満たしていない
2-1. 失敗パターン: 要件不足
業務改善助成金は、事業場内最低賃金を30円以上引き上げることが基本要件です。しかし、実際には、賃上げ額や対象人数が要件を満たしていないケースが少なくありません。
2-2. よくあるケース
例: 小売業B社のケース
B社は、アルバイトスタッフ5人の時給を引き上げる計画で申請しました。しかし、そのうち2人は雇い入れてから6ヶ月未満であったため、実際の対象者は3人のみでした。B社は、この点を見落としたまま申請し、審査の段階で「対象人数が不足している」と指摘され、計画の見直しを余儀なくされました。
2-3. なぜこのミスが起きるのか
•要件の理解不足: 「雇い入れてから6ヶ月以上経過している従業員」という要件を見落としている。
•対象者リストの未作成: 事前に対象者のリストを作成せず、概算で人数を把握していた。
•賃上げ額の計算ミス: 現在の時給と引き上げ後の時給の差額を正確に計算していなかった。
2-4. 対策
対象者のリストを事前に作成し、要件を満たすか確認する
申請前に、以下の情報を含む対象者のリストを作成しましょう。
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従業員名
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雇い入れ日
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現在の時給
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引き上げ後の時給
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引き上げ額
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対象可否
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Aさん
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2023年1月
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1,000円
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1,050円
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50円
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○
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Bさん
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2024年8月
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1,000円
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1,050円
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50円
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× (6ヶ月未満)
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Cさん
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2022年4月
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1,010円
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1,060円
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50円
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○
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このように、一人ひとりの状況を確認することで、要件を満たす対象者が何人いるのかを正確に把握できます。
専門家は、「対象者のリストを事前に作成し、要件を満たすか確認 しましょう」とアドバイスしています。
ミス③: 見積書が1社のみ、仕様が曖昧
3-1. 失敗パターン: 見積書の不備
設備投資の見積書は、原則として2社以上から取得することが推奨されます。しかし、実際には、1社のみの見積書で申請したり、仕様が不明確な見積書を提出したりするケースが少なくありません。
3-2. よくあるケース
例: 製造業C社のケース
C社は、生産ラインの自動化設備を導入する計画で申請しました。見積書は、長年取引のある業者1社からのみ取得し、内容も「自動化設備一式 500万円」という簡素なものでした。審査の段階で、「見積書が1社のみで、仕様が不明確」と指摘され、追加の見積書と詳細な仕様書の提出を求められました。
3-3. なぜこのミスが起きるのか
•業者との関係性: 長年取引のある業者がいるため、他社から見積もりを取る必要性を感じない。
•手間を惜しむ: 複数の業者に見積もりを依頼するのは手間がかかると考え、1社で済ませてしまう。
•仕様の理解不足: 「価格さえ書いてあれば大丈夫だろう」という誤った認識。
3-4. 対策
2社以上から仕様が明記された見積書を取得する
見積書は、以下のポイントを押さえて準備しましょう。
2社以上から見積もりを取得
•価格の妥当性を示すため、原則として2社以上から見積もりを取得します。
•1社のみの場合は、その理由書(「特殊な設備で他社では対応できない」など)を添付する必要がある場合があります。
仕様が明記された見積書を準備
見積書には、以下の情報を明記してもらいましょう。
•設備の名称・型番: 「自動化設備一式」ではなく、「〇〇社製 自動梱包機 型番:ABC-123」
•仕様の詳細: 「処理能力:毎分50個」「サイズ:幅2m×奥行1.5m×高さ1.8m」など
•作業項目ごとの内訳: 「機器本体費」「設置工事費」「操作研修費」など
専門家は、「1社のみ、または仕様書が不明確だと、審査で不利になることも。価格だけでなく 仕様が明記された見積書 を準備しましょう」とアドバイスしています。
ミス④: 労務関連書類の不備
4-1. 失敗パターン: 賃上げの証拠不足
業務改善助成金のような賃上げを伴う制度では、賃金台帳や労働条件通知書など、賃上げを証明できる書類が不足しているとNGとなります。
4-2. よくあるケース
例: サービス業D社のケース
D社は、従業員の時給を引き上げることを口頭で伝え、実際に給与も引き上げました。しかし、労働条件通知書を再発行しておらず、賃金台帳にも引き上げ後の時給が反映されていませんでした。実績報告の段階で、「賃上げを証明する書類が不足している」と指摘され、追加の書類準備に追われることになりました。
4-3. なぜこのミスが起きるのか
•口頭での対応: 「口頭で伝えれば大丈夫だろう」という誤った認識。
•書類管理の不備: 労働条件通知書や賃金台帳の管理が不十分。
•労務知識の不足: どのような書類が必要なのかを理解していない。
4-4. 対策
書面で証拠を残すことが必須
賃上げを実施する際には、以下の書類を必ず準備しましょう。
労働条件通知書の再発行
•賃上げ後の時給を明記した労働条件通知書を、従業員一人ひとりに交付します。
•従業員の署名・捺印をもらい、会社控えを保管します。
賃金台帳の更新
•賃上げ後の時給を賃金台帳に反映させます。
•賃上げ前と賃上げ後の賃金台帳を比較できるように保管します。
就業規則の変更(必要に応じて)
•賃金体系に変更がある場合は、就業規則の変更も必要になる場合があります。
専門家は、「書面で証拠を残すこと が必須です」と強調しています。
ミス⑤: 実績報告での不備
5-1. 失敗パターン: 実績報告書類の不足
補助金・助成金は、交付決定後に事業を実施し、その後「実績報告」を行う必要があります。実績報告の際に、請求書・領収書・納品写真などが揃っていないと、不支給になる可能性があります。
5-2. よくあるケース
例: 飲食店E社のケース
E社は、業務用冷蔵庫を導入し、実績報告の準備を進めました。請求書と領収書は保管していましたが、納品時の写真を撮影し忘れていました。事務局から「納品写真を提出してください」と求められましたが、既に設置から数ヶ月が経過しており、「納品時」の状態を証明することができませんでした。
5-3. なぜこのミスが起きるのか
•納品写真の撮影忘れ: 納品時は忙しく、写真撮影を忘れてしまう。
•実績報告の要件の理解不足: どのような書類が必要なのかを事前に確認していない。
•書類の紛失: 請求書や領収書を紛失してしまう。
5-4. 対策
納品後すぐに写真を撮影・保存する
実績報告では、以下の書類が必要になります。
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必要書類
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内容
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注意点
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請求書
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業者からの請求書
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宛名、日付、金額、内訳が明記されているか確認
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領収書
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支払いを証明する領収書
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宛名、日付、金額が明記されているか確認
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納品写真
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設備が納品された状態の写真
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特に忘れがち! 納品後すぐに撮影
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通帳のコピー
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支払いを証明する通帳のコピー
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振込先、金額、日付が確認できるページ
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専門家は、「特に『写真』は忘れがちです。納品後すぐに写真を撮影・保存 しておきましょう」とアドバイスしています。
実績報告のチェックリストを作成
実績報告の期限は、事業完了後1ヶ月以内など、短期間に設定されていることが多いです。期限に間に合うよう、事前にチェックリストを作成し、必要な書類を漏れなく準備しましょう。
まとめ:ミスを回避し、確実に補助金を受給するためのチェックリスト
補助金・助成金は、中小企業や小規模事業者にとって非常に有効な制度ですが、申請から受給までのプロセスには、多くの事業者が陥りがちな「落とし穴」が存在します。最後に、これらのミスを回避し、確実に補助金を受給するためのチェックリストをまとめました。
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チェック項目
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確認内容
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交付決定のタイミング
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□ 交付決定通知を受け取ってから発注・契約・支払いを行うか?
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賃上げ要件
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□ 賃上げ額は30円以上か?対象者は雇い入れから6ヶ月以上経過しているか?
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対象者リスト
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□ 対象者のリストを作成し、要件を満たすか確認したか?
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見積書
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□ 2社以上から見積もりを取得したか?仕様が明記されているか?
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労務書類
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□ 労働条件通知書を再発行したか?賃金台帳を更新したか?
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実績報告
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□ 請求書・領収書・納品写真を準備したか?特に納品写真を忘れていないか?
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これらのポイントを一つひとつ丁寧に確認し、申請をブラッシュアップすることで、補助金受給の可能性は大きく高まるはずです。ぜひ、諦めずに挑戦してください。
補助金・助成金申請でお困りの方へ
補助金・助成金の申請は、制度の選定から事業計画書の作成、必要書類の準備まで、多くの専門知識と時間を要します。特に、要件の確認や数値目標の根拠づけ、実績報告など、細かなルールを正確に理解し、実行することが求められます。
実は、多くの社会保険労務士は助成金には詳しくても、補助金の申請支援については十分な経験やノウハウを持っていないケースが少なくありません。 また、助成金と補助金では制度の目的も申請プロセスも大きく異なるため、それぞれに特化した専門性が必要です。
当センターでは、各種補助金・助成金の申請支援において、豊富な実績とノウハウを持つ専門家が、あなたの事業計画の策定から申請書類の作成、採択後のフォローまで、一貫してサポートいたします。
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