中小企業が使える助成金一覧【2025年版】
「うちの会社でも助成金が使えるのかな?」「どんな助成金があるのか、全体像を知りたい」そうお考えの中小企業の経営者や人事担当者の方も多いのではないでしょうか。国や地方自治体が提供する助成金は、返済不要の資金として、人材の確保や育成、職場環境の改善など、中小企業の持続的な成長を強力に後押ししてくれます。
しかし、その種類の多さから「どれを選べばいいか分からない」「自社に合ったものを見つけるのが大変」と感じるかもしれません。
2025年版として、中小企業が特に活用しやすい主要な助成金を分野別にわかりやすく解説します。最新の制度概要から、自社に合った助成金を見つけるためのポイントまで、網羅的にご紹介しますので、ぜひ貴社の事業成長にご活用ください。
【目次】
1. 助成金活用のメリット:中小企業が知っておくべき恩恵
中小企業にとって助成金を活用することは、事業運営において非常に多くのメリットをもたらします。返済不要という最大の利点に加え、以下のような点が挙げられます。
- 資金繰りの改善: 新規事業の立ち上げ、従業員のスキルアップ、職場環境の改善など、通常であれば自己資金や借入で賄う費用を助成金でカバーできるため、企業のキャッシュフローを健全に保てます。
- 人材の定着・確保: 従業員の育成や働きやすい環境づくりへの投資は、従業員のモチベーション向上に繋がり、優秀な人材の定着を促進します。また、採用活動においても、手厚い福利厚生や研修制度をアピールできるようになります。
- 生産性の向上: 研修によるスキルアップや、業務改善に資する制度導入により、従業員一人ひとりの生産性が向上し、企業全体の業績アップに繋がります。
- 企業イメージの向上: 従業員を大切にする企業姿勢は、社内外からの評価を高め、採用ブランディングや取引先との関係強化にも寄与します。
- 経営リスクの軽減: 新たな取り組みや制度導入に伴う金銭的リスクを軽減し、より積極的に経営戦略を実行できるようになります。
2. 雇用・労働環境改善に関する主要助成金【2025年版】
厚生労働省が所管する助成金は、主に「雇用の安定」「人材育成」「労働環境の改善」を目的としています。中小企業が最も活用しやすい分野と言えるでしょう。
2-1. キャリアアップ助成金:非正規雇用を正社員化・処遇改善する
目的: 有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者といった非正規雇用の労働者のキャリアアップを促進するため、正社員化や処遇改善(賃金規定の改定、健康診断制度の導入など)に取り組む事業主を支援します。
主なコース(2025年版): 複数のコースがあり、それぞれの取り組み内容に応じて助成されます。
- 正社員化コース: 有期雇用労働者等を正社員に転換した場合に支給。
- 支給額例: 中小企業で1人あたり57万円(有期雇用から正社員)※生産性要件を満たした場合72万円。
- 賃金規定等改定コース: 有期雇用労働者等の基本給の賃金規定等を増額改定した場合に支給。
- 障害者正社員化コース: 障害のある有期雇用労働者を正社員に転換した場合に支給。
ポイント:
- 就業規則や労働協約の改定が必要になる場合があります。
- 事前にキャリアアップ計画の提出が必須です。
▼詳しくはこちら: 【2025年版】キャリアアップ助成金の概要・条件・申請方法まとめ
2-2. 人材開発支援助成金:従業員のスキルアップ・職業訓練を支援する
目的: 労働者の職業能力の開発・向上を目的とした職業訓練などを実施する事業主を支援します。従業員のスキルアップは、企業の生産性向上に直結します。
主なコース(2025年版):
- 人材育成支援コース: 職務に関連した専門的な知識・技能を習得させるための訓練(Off-JT、OJT)などを支援。
- 支給額例: 訓練経費や訓練期間中の賃金の一部を助成。
- 事業展開等リスキリング支援コース: 新規事業の立ち上げやデジタル化推進など、事業展開に必要な新たな知識・技能を従業員に習得させるための訓練(リスキリング)を支援。
ポイント:
- 訓練の計画性や、受講期間中の賃金支払いなどの要件があります。
- 外部の教育機関を利用する場合も対象となることがあります。
▼詳しくはこちら: 【2025年版】人材開発支援助成金の概要・条件・申請方法まとめ
2-3. 両立支援等助成金:仕事と家庭の両立をサポートする
目的: 従業員の仕事と育児・介護の両立を支援し、働きやすい職場環境を整備する事業主を支援します。少子高齢化が進む現代において、企業の競争力向上に欠かせない制度です。
主なコース(2025年版):
- 出生時両立支援コース: 男性従業員の育児休業取得促進に向けた取り組みや、実際に取得した場合に支給。
- 育児休業等支援コース: 育児休業からの円滑な職場復帰や、育児休業中の代替要員確保などを支援。
- 介護離職防止支援コース: 従業員の介護と仕事の両立を支援する制度を導入・利用した場合に支給。
ポイント:
- 就業規則の整備や、制度の周知・利用促進が求められます。
- 従業員の具体的な取得実績や利用実績に応じて支給されます。
▼詳しくはこちら: 【2025年版】両立支援助成金の概要・条件・申請方法まとめ
2-4. 業務改善助成金:生産性向上と賃上げを両立する
目的: 生産性向上に資する設備投資などを行い、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を引き上げた事業主を支援します。中小企業の賃上げを後押しし、経済の活性化を目指します。
ポイント:
- 生産性向上のための機械設備導入、コンサルティング導入、人材育成など幅広い投資が対象。
- 賃上げ額に応じて助成率や助成上限額が変わります。
▼詳しくはこちら: 【2025年版】業務改善助成金の概要・条件・申請方法まとめ
2-5. 働き方改革推進支援助成金:長時間労働の是正に取り組む
目的: 中小企業において、労働時間等の設定改善(残業時間の削減、年次有給休暇の取得促進など)に取り組む事業主を支援します。労働生産性の向上と、従業員のワークライフバランスの実現を目的としています。
主なコース(2025年版):
- 労働時間短縮・年休促進支援コース: 新たな労務管理システムの導入、設備投資、コンサルティングなど、長時間労働の是正や年休取得促進のための取り組みを支援。
- 勤務間インターバル導入コース: 終業時刻から始業時刻までの間に一定の休息時間(インターバル)を設ける制度を導入・運用する事業主を支援。
ポイント:
- 働き方改革関連法の施行に伴い、中小企業も労働時間管理がより厳格化されています。
- 専門家によるコンサルティング費用も助成対象となることがあります。
▼詳しくはこちら: 【2025年版】働き方改革推進支援助成金の概要・条件・申請方法まとめ
3. 雇用創出・多様な人材活用に関する主要助成金【2025年版】
新しい人材の採用や、高年齢者、障害者などの多様な人材の活用を支援する助成金も中小企業にとって重要です。
3-1. トライアル雇用助成金:試行雇用でミスマッチを防ぐ
目的: 職業経験が少なく安定的な就職が困難な求職者(若者、子育てが一段落した女性など)を、原則3ヶ月間の試行雇用(トライアル雇用)として雇い入れる事業主を支援します。
ポイント:
- 期間の定めのない雇用への移行を目指す制度であり、採用のミスマッチを防ぎつつ、助成金を受給できます。
- 特定の方(例:母子家庭の母、障害者など)を対象としたコースもあります。
▼詳しくはこちら: 【2025年版】トライアル雇用助成金の概要・条件・申請方法まとめ
3-2. 地域雇用開発助成金:雇用機会が少ない地域での雇用を創出する
目的: 雇用機会が特に不足している地域(同意雇用開発促進地域など)において、事業所の設置・整備を行い、地域の求職者を雇い入れる事業主を支援します。地域の活性化と雇用創出に貢献します。
ポイント:
- 地域限定の助成金であり、対象地域での事業所の新設や増設が必要です。
- 一定期間、対象となる労働者を継続して雇用することが条件です。
▼詳しくはこちら: 【2025年版】地域雇用開発助成金の概要・条件・申請方法まとめ
3-3. 中途採用等支援助成金:中途採用・UIJターンを促進する
目的: 中途採用者の雇用を拡大したり、地方での人手不足解消のため、東京圏からの移住者の採用(UIJターン)を支援したりする助成金です。
主なコース(2025年版):
- 中途採用拡大コース: 中途採用計画を策定し、中途採用率を増加させた場合に支給。
- UIJターンコース: 東京圏からの移住者を雇い入れた事業主に対して支給。
ポイント:
- 多様な働き方や、地方創生といった国の政策目標に合致しています。
- 具体的な雇用形態や雇用期間に関する要件があります。
▼詳しくはこちら: 【2025年版】中途採用等支援助成金の概要・条件・申請方法まとめ
3-4. 高年齢者雇用安定助成金:高齢者の雇用維持・促進を支援する
目的: 高年齢者の雇用機会の確保や、定年を延長・廃止するなどの措置を講じる事業主を支援します。少子高齢化が進む日本社会において、高齢者の活躍を促進する重要な助成金です。
主なコース(2025年版):
- 高年齢者雇用開発コース: 65歳以上の離職者を雇い入れた場合に支給。
- 高年齢者雇用継続コース: 65歳以上への定年延長や、高年齢者の継続雇用制度を導入・改善した場合に支給。
ポイント:
- 高年齢者が働き続けられる環境づくりを評価する助成金です。
- 60歳以上の従業員を対象としたものが多いです。
▼詳しくはこちら: 【2025年版】高年齢者雇用安定助成金の概要・条件・申請方法まとめ
3-5. 再就職支援助成金:離職者の再就職を支援する
目的: 事業規模の縮小などにより離職を余儀なくされる労働者に対し、再就職支援を行った事業主を支援します。雇用のセーフティネットとしての役割も果たします。
ポイント:
- 企業が倒産・廃止などでなく、事業活動の縮小を伴う場合に適用されることが多いです。
- 再就職支援サービスを外部に委託した場合の費用などが助成対象となります。
▼詳しくはこちら: 【2025年版】再就職支援助成金の概要・条件・申請方法まとめ
4. 助成金活用のための3つの重要ポイント
中小企業が助成金をスムーズに活用し、確実に受給するためには、以下のポイントを押さえることが不可欠です。
4-1. 最新情報の確認と早期準備
助成金制度は、毎年度の予算や社会情勢に応じて、内容が変更されたり、新たな制度が創設されたり、あるいは廃止されたりすることが頻繁にあります。
- 厚生労働省のウェブサイトや、ハローワーク、中小企業支援機関のポータルサイト(例: J-Net21、ミラサポplusなど)で、常に最新の情報を確認しましょう。
- 公募が開始されたら、すぐに公募要領を詳細に読み込み、自社の取り組みが要件を満たすか、必要な書類は何かを確認することが重要です。
- 人気の助成金は予算が上限に達すると早期に受付を終了することもあります。「準備は早めに」が鉄則です。
4-2. 要件の正確な理解と計画書の徹底
助成金の多くは「要件を満たせば受給できる」性質を持っていますが、その要件は細かく、複雑な場合も少なくありません。
- 支給要件を正確に理解する: 対象となる事業主、従業員の条件、取り組みの内容、期間など、あらゆる要件を漏れなく確認しましょう。一つでも満たしていないと、不支給となる可能性があります。
- 計画書の適切な作成: 多くの助成金では、取り組みを実施する前に計画書の提出と認定が必要です。この計画書は、助成金の審査や支給決定の根拠となる重要な書類です。事業内容や従業員の状況を正確に記載し、助成金の目的に沿った計画であることを明確に示しましょう。
- 必要書類の準備: 賃金台帳、出勤簿、就業規則、雇用契約書など、多岐にわたる書類の提出が求められます。普段からこれらの書類を適切に管理・整備しておくことが、スムーズな申請に繋がります。
▼関連リンク:
- 助成金申請の流れと必要書類まとめ
- 助成金申請でよくある失敗10選
- 助成金対象企業セルフチェック
4-3. 専門家(社会保険労務士など)への相談・依頼も検討する
助成金の申請は、複雑な要件確認や書類作成が伴うため、自社で全てを行うのが難しいと感じる場合もあるでしょう。そんな時は、助成金申請の専門家である社会保険労務士(社労士)への相談や依頼を検討するのも有効な手段です。
- メリット:
- 最適な助成金の選定: 自社に合った助成金を見つけてもらえる。
- 申請書類の正確な作成: 複雑な書類作成を代行してもらえる。
- 手続きの効率化: スムーズな申請手続きをサポートしてもらえる。
- 不支給リスクの低減: 要件の見落としや書類不備による不支給リスクを減らせる。
- デメリット:
- 費用が発生する: 相談料や申請代行費用がかかります。
- 丸投げはできない: 最終的な判断や情報提供は自社で行う必要があります。
社労士に依頼することで、本業に集中しながら助成金を活用できるため、投資対効果を考えて検討してみる価値は十分にあります。
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5. まとめ:中小企業の未来を拓く助成金活用
中小企業が活用できる助成金は多岐にわたり、それぞれが異なる目的と要件を持っています。
- 雇用維持や労働環境改善に焦点を当てるなら、厚生労働省管轄のキャリアアップ助成金や人材開発支援助成金、両立支援等助成金、業務改善助成金などが有力な選択肢となります。
- 新規雇用創出や多様な人材活用を目指すなら、トライアル雇用助成金や中途採用等支援助成金、高年齢者雇用安定助成金などを検討できます。
これらの助成金は、単なる資金獲得の手段に留まらず、企業の人材投資や働き方改革を促進し、結果として持続的な成長と競争力強化に繋がります。
重要なのは、常に最新の情報を入手し、自社の状況と照らし合わせ、適切な助成金を見極めることです。そして、計画的に申請準備を進め、必要であれば専門家のサポートも活用しながら、確実に受給を目指しましょう。
助成金を賢く活用し、貴社の人材と事業の未来を拓いていきましょう。
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