助成金は返済不要?誤解されがちな助成金の真実 - 全国助成金・補助金サポートセンター

助成金は返済不要?誤解されがちな助成金の真実

「助成金って、国からお金がもらえるって聞くけど、本当に返さなくていいの?」「何か裏があるんじゃないか?」そうお悩みの経営者や担当者の方も多いのではないでしょうか。助成金が「返済不要」というのは大きな魅力ですが、その言葉の裏には、いくつか知っておくべき「真実」や「注意点」が隠されています。

この「日本一の助成金HPのプロのライター」が、助成金の「返済不要」の原則を改めて確認し、誤解されがちなポイント、そして返還を求められる可能性のあるケースや税金の話まで、中小企業の経営者や人事担当者向けに徹底的に解説します。安心して助成金を活用するために、ぜひ最後までお読みください。

【目次】

  1. 助成金が「返済不要」であることの真実
    1. なぜ返済不要なのか?:助成金の目的と財源
    2. 融資や借入金との決定的な違い
  2. 「原則返済不要」に潜む誤解と落とし穴:返還を求められるケース
    1. 不正受給と判断された場合
    2. 支給要件を満たさなくなった、または遵守しなかった場合
    3. 助成金活用後の「収益納付」(ごく一部の補助金で発生)
  3. 助成金受給と税金:所得として課税される
    1. 法人税・所得税の課税対象となる
    2. 圧縮記帳とは?(一部の助成金・補助金で適用)
  4. まとめ:「返済不要」の助成金を賢く、正しく活用するために

1. 助成金が「返済不要」であることの真実

助成金が返済不要であることは、企業にとって最大のメリットの一つです。これは、助成金が「融資」ではなく「交付金」や「支援金」として位置づけられているためです。

1-1. なぜ返済不要なのか?:助成金の目的と財源

助成金は、国や地方自治体が特定の政策目標を達成するために、企業や事業者の取り組みを後押しする目的で支給されます。

  • 目的: 主に雇用の安定、人材育成、労働環境の改善、生産性向上などを促進するためです。企業がこれらの取り組みを行うことで、社会全体に良い影響をもたらすことを期待しています。
  • 財源: 助成金の主な財源は、企業が支払っている雇用保険料の一部です。私たち(企業も従業員も)が日頃支払っている保険料が、巡り巡って、企業の健全な経営や労働者の福利厚生に役立てられる仕組みになっています。

このように、助成金は「税金」や「保険料」を原資として、政策推進のために活用されるものなので、返済の義務は発生しません。

1-2. 融資や借入金との決定的な違い

助成金は、金融機関からの融資や借入金とは全く性質が異なります。

  • 融資・借入金: 返済義務があり、通常は利息も発生します。返済計画に基づいて資金を返していく必要があります。
  • 助成金: 返済義務がなく、利息も発生しません。企業の財務体質を悪化させることなく、資金を調達できる非常に有利な制度です。

この「返済不要」という点は、企業のキャッシュフローを圧迫せず、新たな投資や事業展開を後押しする上で、大きな強みとなります。

 

2. 「原則返済不要」に潜む誤解と落とし穴:返還を求められるケース

助成金は「原則」返済不要ですが、この「原則」には重要な例外があります。以下のケースに該当すると、支給された助成金の返還を求められたり、厳しいペナルティが課されたりする可能性があります。

2-1. 不正受給と判断された場合

これは最も重大なケースであり、助成金申請において絶対に避けなければなりません。不正受給とは、以下のような行為によって助成金を不当に受け取ることです。

  • 虚偽の申請: 事実と異なる内容を申請書類に記載する(例:従業員の勤務実態を偽る、賃金台帳を改ざんする)。
  • 書類の偽造・改ざん: タイムカード、領収書、雇用契約書などの書類を偽造したり、内容を改ざんしたりする。
  • 目的外使用: 支給された助成金を、申請した目的とは異なる用途(例:研修費用として申請した助成金を、全く関係ない個人的な経費に充てる)に使用する。
  • 事実と異なる報告: 助成金受給後の状況報告などで、虚偽の内容を報告する。

【不正受給が発覚した場合のペナルティ】

  1. 受給額の全額返還: 支給された助成金の全額を返還しなければなりません。
  2. 延滞金・加算金の徴収: 返還額に加えて、延滞金や、悪質な場合は受給額の20%〜100%に相当する加算金が課されます。
  3. 企業名・事業主名の公表: 不正受給を行った企業名や事業主名が、厚生労働省や地方労働局のウェブサイトなどで公表されます。これは企業の信用に甚大な影響を与えます。
  4. 刑事告訴: 悪質な場合は、詐欺罪などで刑事告訴されることもあります。
  5. 今後の助成金・補助金の申請資格剥奪: 今後、一切の助成金や補助金を受けられなくなる可能性があります。

不正受給は、企業の存続を脅かすほどのリスクを伴います。意図的でない「不注意」や「誤解」であっても、結果的に不正とみなされることがあるため、申請時には細心の注意を払い、不明点は必ず管轄機関に確認することが重要です。

2-2. 支給要件を満たさなくなった、または遵守しなかった場合

助成金は、特定の「要件」を満たすことを条件に支給されます。申請時に要件を満たしていても、支給決定までの間にその要件を満たさなくなった場合や、計画通りの取り組みが行われなかった場合、返還を求められる可能性があります。

  • 取り組みの中止・変更: 計画書に記載した取り組みが、途中で中止されたり、内容が大きく変更されたりした場合。
  • 雇用維持の要件違反: 助成金の種類によっては、一定期間の雇用維持が条件となることがあります。その期間内に事業主都合による解雇を行った場合など。
  • 労働関係法令違反の発覚: 助成金申請中に、過去の労働関係法令違反が発覚したり、新たな違反が発生したりした場合。
  • 就業規則の不備・不遵守: 助成金申請の前提となる就業規則が適切でなかったり、その内容が遵守されていなかったりした場合。

これらのケースでは、支給決定が取り消されたり、既に支給された助成金の返還を求められたりすることがあります。

2-3. 助成金活用後の「収益納付」(ごく一部の補助金で発生)

これは助成金ではなく、一部の補助金に見られる特徴ですが、覚えておくと良いでしょう。 一部の補助金では、事業終了後に当該補助金で導入した設備などから大きな収益が発生した場合、その収益の一部を国に納付する「収益納付」という制度が設けられていることがあります。これは、公共性の高い事業で過度な利益を得ることを防ぐためのものです。

助成金ではほとんど見られませんが、補助金を検討する際には、この「収益納付」の有無を確認しておく必要があります。

3. 助成金受給と税金:所得として課税される

助成金は返済不要ですが、受け取った資金は企業の「収入」とみなされ、課税対象となります。

3-1. 法人税・所得税の課税対象となる

  • 法人の場合: 支給された助成金は「益金」(収入)として計上され、法人税の課税対象となります。
  • 個人事業主の場合: 支給された助成金は「事業所得」などの収入として扱われ、所得税の課税対象となります。

課税されるタイミングは、原則として実際に助成金が振り込まれた日(受給日)の属する事業年度(または年)です。

3-2. 圧縮記帳とは?(一部の助成金・補助金で適用)

一部の助成金や補助金では、「国庫補助金等に関する圧縮記帳」という特例が適用される場合があります。これは、助成金で取得した固定資産などについて、課税を繰り延べることができる制度です。

  • 目的: 助成金を使って設備などを購入した場合、助成金は収入となり、設備は費用として計上されますが、通常はタイミングがずれるため、一時的に利益が膨らみ、税負担が増える可能性があります。圧縮記帳は、この一時的な税負担を軽減するための措置です。
  • 注意点: 圧縮記帳の適用には厳格な要件があり、全ての助成金で使えるわけではありません。また、課税を「繰り延べる」だけで、税金が「免除」されるわけではありません。

助成金を受け取ったら、必ず税理士に相談し、適切な会計処理と税務申告を行うようにしましょう。

4. まとめ:「返済不要」の助成金を賢く、正しく活用するために

助成金が「返済不要」であることは、企業の経営にとって非常に大きなメリットです。しかし、その言葉の背後にある「原則」と「例外」を正しく理解することが、賢く、そして安全に助成金を活用するための鍵となります。

  • 不正受給は絶対に避ける: 虚偽の申請や書類の改ざんは、企業に壊滅的なダメージを与えます。常に誠実かつ正確な情報を提供しましょう。
  • 要件を厳守する: 各助成金に定められた「対象条件」や「取り組み内容」を正確に理解し、計画通りに実行することが重要です。
  • 税務処理を怠らない: 助成金は課税対象であることを忘れずに、受給後は速やかに税理士に相談し、適切な会計処理を行いましょう。
  • 情報収集と準備を怠らない: 常に最新の公募要領を確認し、必要な書類を不備なく揃えるための準備を怠らないことが、スムーズな受給への近道です。

助成金は、単なる一時的な資金源ではなく、企業のコンプライアンス強化、人材育成、そして持続的な成長を後押しする有効なツールです。これらの注意点を踏まえ、貴社の事業をさらに発展させるために、助成金を戦略的に活用していきましょう。

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