赤字でも助成金は使えるの?|赤字企業の助成金活用法を徹底解説
「うちは赤字だから助成金は無理だろう…」 「黒字企業じゃないと助成金はもらえないのでは?」 「赤字で助成金をもらったら、後で問題になるのでは…」
経営が厳しい中小企業の経営者の方から、このような声をよく聞きます。赤字企業だからこそ経営改善のために助成金を活用したいのに、赤字を理由に諦めてしまうのは本当にもったいないことです。
結論から申し上げると、ほとんどの助成金は赤字企業でも申請・受給が可能です。むしろ、赤字企業こそ助成金を活用して経営改善を図るべきだと言えます。
この記事では、社会保険労務士事務所として多くの赤字企業の助成金申請をサポートしてきた経験をもとに、赤字企業が助成金を活用する際のポイントや注意点、よくある誤解について詳しく解説します。赤字で悩んでいる経営者の方は、ぜひ最後までお読みください。
【目次】
1.赤字でも助成金は使えるの?
1-1.助成金申請に財務状況は関係ない理由
**助成金の申請要件に「黒字であること」は含まれていません。**これは非常に重要なポイントです。なぜなら、助成金の目的は企業の財務状況を評価することではなく、雇用の安定や労働環境の改善を促進することだからです。
助成金が赤字企業でも利用できる理由:
- 政策目的の達成が優先
- 雇用の維持・創出
- 労働条件の改善
- 人材育成の促進
- 働き方改革の推進
- 返済不要の給付金である
- 融資ではないため返済能力は問われない
- 将来の収益性も審査対象外
- 担保や保証人も不要
- 労働法令の遵守が重要
- 労働保険料の納付状況
- 社会保険の加入状況
- 労働関係法令の遵守
- これらが満たされていれば財務状況は問わない
- むしろ赤字企業の支援も目的の一つ
- 経営が厳しい企業の雇用維持
- 生産性向上による経営改善
- 地域経済の安定
赤字企業が活用しやすい助成金
赤字企業でも問題なく活用できる主な助成金をご紹介します:
- キャリアアップ助成金
- 非正規雇用労働者の正社員化を支援
- 財務要件なし
- むしろ人材の定着で経営改善に寄与
- 人材開発支援助成金
- 従業員の教育訓練を支援
- 赤字でも人材育成は重要
- 生産性向上につながる
- 両立支援助成金
- 仕事と家庭の両立支援
- 優秀な人材の定着
- 採用コストの削減
- 業務改善助成金
- 最低賃金引上げと生産性向上設備導入
- まさに赤字企業の経営改善に直結
- 設備投資で効率化
- トライアル雇用助成金
-
- 試行雇用で採用ミスマッチを防止
- 採用リスクの軽減
- 人材確保の支援
助成金と補助金の違い
ここで重要な違いを理解しておきましょう:
助成金(主に厚生労働省)
- 要件を満たせば原則受給可能
- 財務審査なし
- 雇用・労働関連が中心
- 赤字でも問題なし
補助金(経済産業省など)
- 審査による採択制
- 事業計画の評価あり
- 一部で財務状況を考慮する場合も
- それでも赤字を理由に不採択にはならない
2.よくある誤解の背景
誤解1:赤字企業は申請資格がない
誤解の内容 「赤字企業には助成金を申請する資格がない」と思い込んでいる経営者が多くいます。
真実 助成金の申請要件に財務状況は含まれていません。重要なのは:
- 労働保険・社会保険の適正加入
- 赤字でも保険料を納付していればOK
- 滞納がなければ問題なし
- 労働関係法令の遵守
- 最低賃金の支払い
- 労働時間の適正管理
- 就業規則の整備
- 事業の継続性
- 現在事業を行っていること
- 今後も継続する意思があること
誤解2:財務審査で落とされる
誤解の内容 「決算書を提出したら赤字で審査に落ちる」という不安があります。
真実 助成金申請で決算書の提出を求められることは基本的にありません:
- 提出書類に決算書は含まれない
- 必要なのは労働関係の書類
- 賃金台帳、出勤簿など
- 雇用契約書、就業規則など
- 審査は要件適合性のみ
- 対象労働者の要件
- 実施内容の要件
- 手続きの適正性
- 例外的なケース
- 一部の補助金では事業計画書が必要
- それでも赤字を理由に不採択にはならない
誤解3:赤字なのに助成金をもらうのは問題
誤解の内容 「赤字企業が公的資金を受け取るのは道義的に問題」と考える方がいます。
真実 むしろ赤字企業こそ助成金を活用すべきです:
- 助成金の本来の目的
- 雇用の維持・安定
- 企業の成長支援
- 地域経済の活性化
- 赤字企業への支援は政策の一環
- 倒産による失業の防止
- 経営改善の促進
- 税収の将来的な確保
- 正当な権利の行使
- 要件を満たせば受給は正当
- 税金や保険料を納付している
- 雇用を維持している社会貢献
誤解4:返済能力がないと判断される
誤解の内容 「赤字だと返済能力がないと見なされる」という融資との混同があります。
真実 助成金は返済不要の給付金です:
- そもそも返済の必要がない
- 融資ではなく給付
- 返済能力の審査は存在しない
- 将来の収益性も問われない
- 現在の取組みを評価
- 将来の業績予測は不要
- 担保・保証人も不要
- 信用力は関係ない
- 純粋に要件適合性のみ
3.専門的な視点から見た赤字企業の助成金活用
社会保険労務士としての見解
当事務所では、多くの赤字企業の助成金申請をサポートしてきました。その経験から言えることは、赤字企業こそ助成金を積極的に活用すべきだということです。
赤字企業が助成金を活用することで得られるメリット:
- キャッシュフローの改善 赤字企業にとって最も重要なのは資金繰りです。助成金は返済不要の資金として、キャッシュフローの改善に直接貢献します。例えば、キャリアアップ助成金で正社員化を行えば、1人あたり57万円(中小企業の場合)の助成金が受給できます。
- 投資余力の創出 赤字で設備投資や人材投資を躊躇している企業も多いでしょう。助成金を活用すれば、自己資金の負担を抑えながら必要な投資を行うことができます。
- 従業員のモチベーション向上 赤字企業では従業員の不安も大きくなりがちです。助成金を活用した正社員化や教育訓練は、従業員に「会社は自分たちに投資してくれている」というメッセージを伝え、モチベーション向上につながります。
- 経営改善のきっかけ 助成金申請を機に就業規則を整備したり、労務管理を見直したりすることで、結果的に経営体質の改善につながることも多いです。
財務面での注意点
赤字企業が助成金を活用する際の財務面での注意点をお伝えします。
- 助成金は課税対象 助成金は益金として計上されるため、赤字が減少または黒字転換する可能性があります:
- 法人税の課税対象
- ただし赤字の場合は繰越欠損金と相殺
- 結果的に税負担は発生しないことが多い
- 資金繰りへの配慮 助成金は後払いが原則です:
- 先に経費の支出が必要
- 助成金入金まで数ヶ月かかる
- つなぎ資金の準備が重要
- 会計処理の適正化
- 未収入金としての計上時期
- 関連経費との対応関係
- 税理士との連携が望ましい
経営改善の観点から
赤字企業が助成金を活用して経営改善を図る戦略的アプローチ:
- 生産性向上への投資
- 業務改善助成金で設備投資
- IT導入補助金でシステム化
- 効率化による原価低減
- 人材力の強化
- 人材開発支援助成金で教育訓練
- スキルアップによる付加価値向上
- 多能工化による人件費効率化
- 優秀人材の確保・定着
- キャリアアップ助成金で正社員化
- 両立支援助成金で働きやすい環境
- 採用・教育コストの削減
- 新たな取組みへの挑戦
- 事業再構築補助金で新分野進出
- ものづくり補助金で新商品開発
- 赤字脱却への転換点
4.赤字企業が助成金を活用する際のポイント
1. まず活用できる助成金を確認
赤字でも確実に活用できる助成金:
- ✅ キャリアアップ助成金
- ✅ 人材開発支援助成金
- ✅ 両立支援助成金
- ✅ トライアル雇用助成金
- ✅ 特定求職者雇用開発助成金
- ✅ 業務改善助成金
2. 必須要件を確実にクリア
最低限満たすべき要件:
- 労働保険料の滞納がない
- 社会保険に適正に加入している
- 最低賃金以上の賃金を支払っている
- 労働関係法令を遵守している
3. 資金繰り計画を立てる
助成金受給までの資金計画:
- 初期投資に必要な資金の確保
- 助成金入金時期の把握(通常3〜6ヶ月後)
- つなぎ資金の準備
- 金融機関への相談も選択肢
4. 専門家のサポートを活用
当事務所のサポート内容:
- 活用可能な助成金の診断
- 申請書類の作成支援
- 資金繰りアドバイス
- 受給後のフォローアップ
5. 中長期的な視点を持つ
助成金を経営改善につなげる:
- 単発ではなく継続的な活用
- 経営計画との連動
- PDCAサイクルの確立
- 黒字化への道筋
5.赤字企業におすすめの助成金
1. すぐに活用できる助成金
キャリアアップ助成金(正社員化コース)
- 有期契約社員を正社員化
- 1人57万円(中小企業)
- 人材定着で売上向上へ
トライアル雇用助成金
- 3ヶ月の試用期間
- 月4万円×3ヶ月
- 採用リスクの軽減
2. 経営改善に直結する助成金
業務改善助成金
- 最低賃金引上げ+設備投資
- 最大600万円
- 生産性向上で赤字脱却
人材開発支援助成金
- 従業員の能力開発
- 経費の最大75%助成
- スキルアップで競争力強化
3. 働き方改革系助成金
働き方改革推進支援助成金
- 労働時間短縮の取組み
- 最大490万円
- 効率化で人件費削減
両立支援助成金
- 育児・介護との両立支援
- 優秀人材の定着
- 採用コスト削減
6.注意すべき点
1. 赤字でも満たすべき要件
絶対に必要な要件:
- 労働保険料を滞納していない
- 社会保険料を滞納していない
- 過去に不正受給をしていない
- 労働関係法令違反がない
2. 資金繰りの悪化を防ぐ
リスク管理:
- 無理な投資は避ける
- 複数申請時は計画的に
- 専門家に相談する
- 金融機関との連携
3. 継続性の確保
持続可能な取組み:
- 助成金だけに頼らない
- 本業の改善も並行
- 従業員の理解を得る
- 長期的視点を持つ
7.まとめ
**赤字企業でも助成金は問題なく活用できます。**むしろ、経営が厳しい赤字企業こそ、助成金を活用して経営改善を図るべきです。
重要なポイント:
- 助成金申請に財務要件はない
- 労働関係法令の遵守が重要
- 返済不要だから赤字でも安心
- 経営改善のきっかけになる
- 専門家のサポートで確実に
赤字だからと諦めるのではなく、赤字だからこそ助成金を活用して、従業員と共に経営改善に取り組んでいただきたいと思います。
当事務所では、赤字企業の助成金活用を数多くサポートしてきました。「うちは赤字だから…」と諦める前に、ぜひ一度ご相談ください。御社の状況に最適な助成金活用プランをご提案させていただきます。
助成金は、赤字企業が黒字化への第一歩を踏み出すための、強力な支援ツールです。この機会を最大限に活用して、経営改善への道を歩み始めましょう。
※本記事の内容は2025年1月時点の情報に基づいています。制度は変更される可能性がありますので、申請時は必ず最新情報をご確認ください。