食品製造業向け|生産性向上・自動化設備導入で使える補助金2025年版
- 【目次】
- 1. 食品製造業が直面する3つの課題と自動化の必要性
- 2. 補助金①:ものづくり補助金(生産性向上枠)
- 3. 補助金②:省力化投資補助金(人手不足対策)
- 4. 補助金③:事業再構築補助金(新商品開発・新分野進出)
- 5. 補助金④:地方自治体の食品製造業支援補助金
- 6. 食品製造業が活用できる補助金の比較表
- 7. 申請のポイントと成功事例
- 8. まとめ:食品製造業の補助金活用チェックリスト
はじめに
食品製造業は、人手不足、原材料費の高騰、衛生管理の厳格化という三重の課題に直面しています。これらの課題を解決する鍵となるのが、自動化設備の導入による生産性向上です。そして、その投資を後押しするのが、国や地方自治体が提供する補助金制度です。
本記事では、食品製造業が生産性向上・自動化設備導入で活用できる補助金を網羅的に解説します。この記事を読めば、自動盛付機や自動包装機などの導入コストを大幅に削減し、事業の成長につなげることができるでしょう。
食品製造業が直面する3つの課題と自動化の必要性
1-1. 深刻化する人手不足
食品製造業の有効求人倍率は2.0倍を超えており、パート・アルバイトの確保が困難な状況が続いています。特に、地方の中小食品製造業では、時給を上げても人が集まらないという声が多く聞かれます。
1-2. 原材料費の高騰
小麦、食用油、包装資材などの原材料費が高騰しており、収益性が悪化しています。生産性を向上させ、単位あたりのコストを削減することが急務です。
1-3. 衛生管理の厳格化
HACCPの制度化により、食品製造業では衛生管理の厳格化が求められています。手作業から機械化への転換は、衛生管理の観点からも重要です。
| 課題 | 自動化による解決 |
|—|—|
| 人手不足 | 自動盛付機、自動包装機で省人化 |
| 原材料費高騰 | 生産性向上により単位コスト削減 |
| 衛生管理の厳格化 | 手作業削減により異物混入リスク低減 |
—
補助金①:ものづくり補助金(生産性向上枠)
2-1. 制度概要
ものづくり補助金は、中小企業の生産性向上を支援する国の補助金制度です。食品製造業でも、自動盛付機や自動包装機などの導入で活用できます。
制度の基本情報:
| 項目 | 内容 |
|—|—|
| 補助上限額 | 750万円〜5,000万円(枠による) |
| 補助率 | 1/2(中小企業)、2/3(小規模事業者) |
| 対象経費 | 設備費、工事費、システム構築費 |
| 公募頻度 | 年3〜4回 |
| 採択率 | 40〜60%(公募回による) |
2-2. 食品製造業での活用例
活用例①:惣菜製造業
– 自動盛付機: 1台(800万円)
– 自動包装機: 1台(500万円)
– 投資総額: 1,300万円
– 補助金: 650万円(補助率1/2、上限内)
– 自己負担: 650万円
導入効果:
– パート従業員: 10名→4名(6名削減)
– 日間生産量: 2,000食→3,500食(1.75倍)
– 年間人件費削減: 1,080万円
活用例②:製パン業
– 自動成形機: 1台(1,000万円)
– 自動スライサー: 1台(300万円)
– 投資総額: 1,300万円
– 補助金: 650万円(補助率1/2、上限内)
– 自己負担: 650万円
導入効果:
– 作業員: 5名→2名(3名削減)
– 日間生産量: 1,000個→2,000個(2倍)
– 年間人件費削減: 1,800万円
2-3. 採択のポイント
– 生産性向上の明確化: 生産量が何倍になるか、人員削減効果はどれくらいかを数値で示す
– 投資回収計画: 3〜5年以内の投資回収を示す
– 衛生管理の向上: HACCP対応、異物混入リスク低減を強調
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補助金②:省力化投資補助金(人手不足対策)
3-1. 制度概要
省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業の省力化設備導入を支援する制度です。食品製造業の自動化設備に最適です。
制度の基本情報:
| 項目 | 内容 |
|—|—|
| 補助上限額 | 最大1,500万円 |
| 補助率 | 1/2 |
| 対象経費 | IoT、ロボット等の省力化設備 |
| 公募頻度 | 年2〜3回 |
| 採択率 | 50〜70%(比較的高い) |
3-2. 食品製造業での活用例
活用例①:菓子製造業
– 自動包装ロボット: 2台(1,200万円)
– 補助金: 600万円(補助率1/2)
– 自己負担: 600万円
導入効果:
– 包装作業員: 8名→3名(5名削減)
– 日間生産量: 5,000個→8,000個(1.6倍)
– 年間人件費削減: 3,000万円
活用例②:冷凍食品製造業
– 自動計量充填機: 1台(1,000万円)
– 補助金: 500万円(補助率1/2)
– 自己負担: 500万円
導入効果:
– 計量作業員: 4名→1名(3名削減)
– 日間生産量: 3,000パック→5,000パック(1.67倍)
– 年間人件費削減: 1,800万円
3-3. 採択のポイント
– 人員削減効果: 何名の削減が可能かを明確に示す
– 人手不足の深刻さ: 求人しても人が集まらない現状を説明
– 労働環境改善: 重労働からの解放、作業環境の改善を強調
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補助金③:事業再構築補助金(新商品開発・新分野進出)
4-1. 制度概要
事業再構築補助金は、新商品開発や新分野進出を行う中小企業を支援する国の補助金制度です。食品製造業が新商品ラインを立ち上げる際に活用できます。
制度の基本情報:
| 項目 | 内容 |
|—|—|
| 補助上限額 | 最大7,000万円 |
| 補助率 | 1/2〜2/3 |
| 対象経費 | 設備費、工事費、システム構築費、広告宣伝費など |
| 条件 | 新分野進出、業態転換、事業転換など |
| 公募頻度 | 年2〜3回 |
| 採択率 | 30〜50% |
4-2. 食品製造業での活用例
活用例①:和菓子製造業→洋菓子製造への進出
– 洋菓子製造設備: 一式(3,000万円)
– 補助金: 2,000万円(補助率2/3)
– 自己負担: 1,000万円
新分野進出の理由:
– 和菓子市場の縮小
– 洋菓子市場の拡大
– 若年層の顧客獲得
活用例②:業務用食品製造→個人向けEC販売への進出
– 小分け包装設備: 1式(2,000万円)
– ECサイト構築: 500万円
– 投資総額: 2,500万円
– 補助金: 1,666万円(補助率2/3)
– 自己負担: 834万円
業態転換の理由:
– 業務用市場の縮小(コロナ禍の影響)
– 個人向けEC市場の拡大
– 直販による収益性向上
4-3. 採択のポイント
– 新規性の明確化: なぜ新分野進出が必要か、市場データを用いて説明
– 実現可能性: 新分野での競争力、販路確保の具体策を示す
– 投資回収計画: 新事業の売上・利益計画を詳細に作成
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補助金④:地方自治体の食品製造業支援補助金
5-1. 制度概要
都道府県や市区町村が独自に実施する食品製造業向けの補助金です。地域によって制度内容が大きく異なります。
主な地方自治体の制度例:
| 自治体 | 制度名 | 補助上限額 | 補助率 | 特徴 |
|—|—|—|—|—|
| 北海道 | 食品製造業設備投資補助金 | 500万円 | 1/3 | 地域食材活用が条件 |
| 長野県 | 食品製造業生産性向上支援事業 | 300万円 | 1/2 | 生産性向上が条件 |
| 静岡県 | 食品製造業HACCP対応支援事業 | 200万円 | 1/2 | HACCP対応設備が対象 |
| 福岡県 | 食品製造業販路拡大支援事業 | 100万円 | 2/3 | 販路拡大が条件 |
5-2. 地方自治体補助金の特徴
メリット:
– 国の補助金と併用できる場合がある
– 地域特産品の活用など、地域性を重視
– 採択率が比較的高い(60〜80%)
デメリット:
– 補助上限額が低い(100万円〜500万円)
– 対象地域が限定される
– 予算枠が小さく、早期に締め切られる場合がある
5-3. 併用戦略
国の補助金と地方自治体の補助金を併用することで、補助金総額を最大化できます。
併用例:
– ものづくり補助金(国): 650万円(自動盛付機+自動包装機)
– 北海道食品製造業設備投資補助金: 300万円(冷凍設備)
– 合計: 950万円の補助金獲得
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食品製造業が活用できる補助金の比較表
| 補助金名 | 補助上限額 | 補助率 | 対象経費 | 採択率 | 特徴 |
|—|—|—|—|—|—|
| ものづくり補助金 | 750万円〜5,000万円 | 1/2〜2/3 | 生産設備全般 | 40〜60% | 最も一般的 |
| 省力化投資補助金 | 最大1,500万円 | 1/2 | 省人化設備 | 50〜70% | 人手不足対策 |
| 事業再構築補助金 | 最大7,000万円 | 1/2〜2/3 | 新事業用設備 | 30〜50% | 新分野進出が条件 |
| 地方自治体補助金 | 100万円〜500万円 | 1/3〜2/3 | 地域による | 60〜80% | 併用可能な場合あり |
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申請のポイントと成功事例
7-1. 申請のポイント
ポイント①:生産性向上効果を数値で示す
– 「日間生産量が2,000食から3,500食に増加(1.75倍)」
– 「作業員を10名から4名に削減(6名削減)」
ポイント②:衛生管理の向上を強調
– 「手作業を削減し、異物混入リスクを80%低減」
– 「HACCP対応により、食品安全性を向上」
ポイント③:投資回収計画を詳細に作成
– 「年間人件費削減1,080万円により、1.2年で投資回収」
7-2. 成功事例:惣菜製造業B社
企業プロフィール:
– 業種: 惣菜製造業(高齢者向け配食サービス)
– 従業員数: 20名
– 年商: 2億円
– 課題: パート従業員の確保困難、生産能力不足
導入内容:
– 自動盛付機: 1台(800万円)
– 自動包装機: 1台(500万円)
– 投資総額: 1,300万円
補助金獲得:
– ものづくり補助金: 650万円(補助率1/2)
– 自己負担: 650万円
導入効果:
– パート従業員: 10名→4名(6名削減)
– 日間生産量: 2,000食→3,500食(1.75倍)
– 年間人件費削減: 1,080万円
– 投資回収期間: 1.2年
– 異物混入クレーム: 80%削減
7-3. 申請書の記載例(抜粋)
「当社は高齢者向け配食サービス用の惣菜を製造していますが、パート従業員10名の確保が困難な状況です。時給を1,200円に引き上げても応募がなく、受注を断らざるを得ません。自動盛付機と自動包装機を導入することで、パート従業員を10名から4名に削減し、日間生産量を2,000食から3,500食に増やします。また、手作業を削減することで、異物混入リスクを80%低減し、HACCP対応を強化します。年間人件費削減1,080万円により、1.2年で投資を回収します。」
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まとめ:食品製造業の補助金活用チェックリスト
食品製造業が補助金を活用して設備投資を行うためには、以下のチェックリストを活用しましょう。
| チェック項目 | 確認内容 |
|—|—|
| 補助金の選定 | □ ものづくり補助金を検討したか?□ 省力化投資補助金を検討したか?□ 事業再構築補助金を検討したか?□ 地方自治体の補助金を調査したか? |
| 申請書の内容 | □ 生産性向上効果を数値で示したか?□ 人員削減効果を明確にしたか?□ 衛生管理の向上を強調したか?□ 投資回収計画を詳細に作成したか? |
| 資金調達計画 | □ 自己資金・融資の計画を立てたか?□ 金融機関に事前相談したか? |
| 専門家サポート | □ 補助金申請の専門家に相談したか? |
食品製造業は、人手不足と原材料費高騰という厳しい環境に直面していますが、自動化設備の導入により、これらの課題を克服できます。補助金を活用することで、投資負担を大幅に軽減し、事業の成長につなげることができます。ぜひ、本記事のポイントを参考に、補助金申請に挑戦してください。
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